こんにちは。
はるき ゆかです。
昨日の夜、東野圭吾著「時生」読み終わりました。
時を超えて、大切な人の幸せのために少年は旅立ちます。
愛があれば、こんなことも夢ではないのかもしれません。
「時生」 あらすじ
不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、宮本拓実は妻に、二十年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。どうしようもない若者だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った__。過去、現在、未来が交錯するベストセラー作家の集大成作品。
[引用元]講談社文庫「時生」裏表紙より
宮本拓実と麗子夫妻の息子・時生は、「グレゴリウス症候群」という遺伝性の病気で、命の灯はあと少しで消えようとしています。
そんなときに、時生の父親・拓実は妻の麗子にある一人の青年との不思議な話を語りはじめて…。
どうしようもない男・拓実
主人公の宮本拓実は、いわゆる「クズ」です。
仕事も続かず、恋人の千鶴に、経済的にも精神的にも頼り切った23歳の青年です。
気が短く、何でもすぐに投げ出し、諦めてしまいます。
千鶴にも1,000円、2,000円とせびっては、ゲームやパチンコに使ってしまうのです。
食べるにも困っていて、スーパーでパンの耳をもらっては、ケチャップをつけてトースターで焼く「貧者のピザ」なるものを作って、空腹をしのいでいます。
拓実の生い立ちは複雑で、実の母親は貧しさのため育てられず、拓実が赤ちゃんの頃、子供のできない宮本家に養子に出します。
それには、深い事情があったのですが…。
拓実がそのことを知ったのは高校受験のとき、初めて戸籍謄本を見たときです。
それから、育ての両親との確執もあり、人生、投げやりに生きてきました。
自分がずっと親だと思っていた人が、突然、本当の親ではないと知ったときの衝撃とは、一体どんなものなのでしょうか。
しかし、拓実は、クズですが、性根が腐ったタイプのクズではありません。
それは、本書を読み勧めていくうちに、徐々に感じられます。
拓実は、ちょっと照れ屋で意地っ張りな愛すべきクズなのです。
突然現れたトキオという青年
そんな拓実に前に、突然一人の青年・トキオが現れます。
拓実が、東京・浅草の花やしきで「鬼退治ゲーム」をしていたときのことです。
トキオは、拓実と自分は「親戚のようなもの」だといいます。
拓実は、あまり深く考えず、不思議とトキオをすんなり受け入れます。
トキオは、拓実にお前は誰なんだ?と聞かれて、
俺は……一人だ。一人きりなんだよ。俺には行くところなんかどこにもない。帰るところもどこにもない。誰の子供でもない。俺は……俺の親は、この世界にはいない。もう二度と、あの人たちに会うことはできない(本文より引用)
と言って、泣くのでした。
トキオは、拓実の未来の息子・時生なのでしょうか。
しかし、このときの拓実には、想像もつかないことだったと思います。
それから、拓実はトキオと行動を共にすることになるのです。
千鶴への愛
拓実は、いい加減ですが、恋人の千鶴のことを心から愛しています。
仕事の世話をしてくれたり、お金に困っていると援助してくれたり…。
そんな千鶴が突然、拓実の前から姿を消してしまいます。
ある事件に巻き込まれてしまうのです。
拓実は、命懸けで千鶴を救おうと奔走します。
拓実は、クズですが千鶴への愛だけは本物なのです。
そして、この「ある事件」をきっかけに、拓実の人生は大きく変化していきます。
事あるごとに、トキオが拓実を助けてくれます。
それは、トキオにとっても必要なことなのですが、そのときの拓実には理解できません。
不思議に思いながらも、トキオの言うことを聞くと、拓実は良い方向に導かれていくのです。
本書は、ミステリーなのか、SFなのか、ホラーなのか、ヒューマンドラマなのか、どのジャンルの小説に入るのかわからないほど、さまざまな要素を感じることができます。
新しい道へ
千鶴の友人の竹美やその恋人ジェシーなどの力を借りて、「ある事件」が、一定の解決を見たあと、拓実と千鶴は、お互い新しい道を歩き始めます。
お互いの幸せを祈りながら。
トキオは、未来に起こることを知っています。
そして、その未来を拓実に聞かせるのですが、そこから、拓実は新しい世界へと導かれます。
トキオが言っていたことを、そのまま語っているだけなのですが、その発想をおもしろいと言ってくれる人が現れるのです。
そして、拓実は、やっとひとり立ちすることが出来ます。
今も、世界的に成功している人は、何年も先を見ることが出来る人たちです。
ある意味、拓実はそこまでの先見の明はないのですが、それはトキオが補ってくれるのです。
そして、トキオも、拓実と別れるときがやってきます。
それは、トキオにとって、自分が生まれてくるための最も大切なことを成し遂げるときでした。
拓実は、千鶴以外の人間とは、あまりうまく付き合っていくことができず、そして、それを別にどうでもいいと思っていましたが、トキオだけは違いました。
拓実は、トキオといるときは、とても心が安らかになるのでした。
最後に
東野圭吾著「時生」の感想でした。
本書は、500ページを超える長編ですが、あっという間に読み終えることができました。
登場人物も多いですし、様々な人間関係や事件が絡み合っているのですが、すっきりと読むことができます。
ぜひ、おすすめの一冊です!