『代償』感想 著者 伊岡瞬|人の心を弄ぶモンスター

こんにちは。

はるき ゆかです。

今朝、伊岡瞬著『代償』読み終わりました。

以前、小栗旬主演でドラマ化されていたのを観たのですが、原作とは内容が少し違っていましたが、とても怖かったので印象に残っているドラマでした。

その頃、私の近くにも人の心を弄ぶモンスターいたので…。

『代償』 あらすじ

幸せな家庭で育てられた少年・奥山圭輔はある不幸な事情によって、遠縁にあたる親戚の家で暮らすことになる。そこには、圭輔と同学年の達也という少年がいた。

達也は一見すると人懐こい少年であったが、圭輔はどうしても好きになれなかった。この達也とその母道子と生活することになった圭輔の平凡だが幸せだった生活は、一変する…。

成人した圭輔は、高校生になってやっとこの家を出ることが出でき、その後、弁護士になっていた。

その圭輔の元に達也から手紙が届く。「私は無実の罪で逮捕されてしまいました。どうか私の弁護をしていただけないでしょうか」

巧妙に仕組まれた罠に、翻弄されていく圭輔。圭輔は、この人の心を弄ぶモンスター・達也とどのように対峙していくのか?

事実は小説より奇なり

本書は、450ページに及ぶ長編ミステリーですが、読む手が止まらずあっという間に読み切ってしまいました。

達也のようなモンスターは、小説だから誇張されているのでは?と思いがちですが、実際にこういう人は現実に存在します。

人の心を弄び、疎まれているようで、人を惹きつける力を持っているモンスター。

それほど頭がいい(勉強ができるわけではない)わけではないのに、人を騙し陥れることに関しては、誰も思いもよらない方法を思いつく怖ろしい人間です。

幸せな人を悪夢のどん底に落とすことで快感を得る人間は、実際に存在し、私自身も知っています。

あなたの側にも、いつそんなモンスターが現れるかしれません。

そんな人間にはできるだけ、近づかないに越したことはないのですが、本書の主人公・奥山圭輔は、まだ小学生。

どうしようもない状況に追い込まれてしまいます…。

しかし、本書に登場する主要な人物たちは、この達也とその継母・道子以外は、みんながとてもあたたかく常識的で愛情にあふれた人々です。

そのため、圭輔は、ある意味とても幸せだったと思います。

本書の中で詳しくは語られていませんが、圭輔以外にも、達也に陥れられ、失意の中で自ら命を絶つところまで追い詰められた人が何人もいます。

達也自身は、一切自分で手を下すことなく…。

圭輔自身も本書の中で感じていることですが、自分とは住む世界が違う人間と関わらなければいけないことほど、辛いことはないでしょう。

代償を払ってもらおうか!

本書は、二部構成になっています。

一部は圭輔の少年時代、二部は圭輔が弁護士になった後。

そして、そのどちらにおいても、圭輔は達也に人生をぶち壊されそうになりますが、見事に再生します。

嫌な気持ちが残る「嫌ミス(嫌な気持ちになるミステリー)」ではなく、最後はハッピーエンドです。

読んでいる間、読者は誰しもが達也の正体を暴いてやりたい!と怒りに燃えると思います。

そして、最後の読後感は素晴らしくさわやかです。

圭輔と先輩の美人弁護士の白石真琴との恋もうまくいきそうです。

人生の中で、誰もが一度は関わり合いにならなければよかったと思い人に出会うことでしょう。

しかし、出会ってしまったら、とにかく関係を断ち切ることです。

断ち切ることができなくなる前に…。

最後に

人の心を操ることで起こった凄惨な事件と言えば、北九州市連続監禁殺人事件や兵庫県尼崎市の連続死体遺棄殺人事件などを思い起こされる方が多い思います。

本書を読んで、これは小説の中だけのことではないと強く感じました。

いつ、誰が圭輔のような目に遭わされるかわからない…。