『嘘をもうひとつだけ』感想 著者 東野圭吾|加賀恭一郎シリーズ短編集

こんにちは。

はるき ゆかです。

 

昨日の夜、東野圭吾著「嘘をもうひとつだけ」読み終わりました。

加賀恭一郎シリーズの5つの短編集です。

1話づつ、感想を書いてみます。

やっぱり、東野圭吾は面白い!

嘘をもうひとつだけ

本書の表題作である「嘘をもうひとつだけ」です。

弓削バレエ団の「アラビアンナイト」の公演初日。

加賀恭一郎は、数日前に見つかった早川弘子の死体の件で事務局長の寺西美千代を訪ねていた…。

 

弓削バレエ団の元プリマドンナ・寺西美千代は、この日の公演「アラビアンナイト」の初演で主演を務めていました。

そしてこの作品が、美千代のバレエダンサーとして最後の作品となりました。

「アラビアンナイト」はかなり高いバレエダンサーとしてのテクニックと体力を必要とする作品でした。

 

それにしても、加賀のバレエへの造詣の深さは舌を巻くほどです。

そして、誇り高き芸術家の矜持を見せつけられる作品でした。

冷たい灼熱

暑い夏の日の事件。

田沼洋次の妻・美恵子の他殺体が自宅で見つかり、息子の裕太の姿がなかったーー。

裕太は誘拐されてしまったのか?

しかし、身代金の要求もなく、時間だけが過ぎてゆきます。

裕太は一体どこにいるのか…。

 

加賀恭一郎の観察眼の鋭さが光る作品です。

真相は、予想の遥か上をいくものでした。

依存症の怖さ…。

そして、浅はかな素人の偽装工作は、加賀恭一郎の手にかかれば簡単に解明されてしまうのでした。

第二の希望

楠木真智子・理砂親子には、大きな夢がありました。

理砂が体操選手として、オリンピックに出るというものでした。

真智子自身も、昔、体操選手として活躍しており、今はその夢を娘に託しています。

娘にかける母の期待は、離婚さえもいとわない強いもので…。

 

読み始めたときは、もう少し単純な殺人事件だと思っていましたが、実はそうではありませんでした。

加賀恭一郎の事件解明への執念と悲しい親子愛の物語です。

ラスト近くで、犯人は彼女だからこそできたトリックだと気づかされるのでした。

狂った計算

坂上奈央子は、一週間前に夫を亡くしたばかりの未亡人でした。

新築一戸建てに住み、周囲から見ると幸せそうに見えた奈央子と夫の坂上隆昌でしたが、実は隆昌は横暴で自己中心的な人物で、奈央子はこの結婚に後悔していました。

そんな奈央子の心を揺り動かしたのが、隆昌と奈央子が住む新築の家の設計士である中瀬幸伸でした。

そして、奈央子と幸伸はある計画を立てて…。

 

本書の5つの短編の中で、私が一番好きだったのがこの「狂った計算」です。

加賀恭一郎でさえ、結末を予想できなかったほど「狂った計算」でした。

不謹慎かもしれませんが、もう少し待っていたら…運命とは思ったようにはならないものです。

どれほど嫌な相手でも、殺人を考えることは許されないことなのだということを思い知らされます。

どの短編も素晴らしいのですが、特におすすめの作品です。

友の助言

「友の助言」では、加賀恭一郎のプライベートな友人が登場します。

会社経営者で加賀の大学時代の友人・萩原保です。

経営者の萩原保は、とにかく忙しい毎日を過ごしていました。

しかし、愛する妻・峰子と一人息子の大地とともに裕福で幸せな暮らしをしていたのですが…。

 

綿密に計画を練った殺人より「未必の故意」は、ある意味、残酷なものだと思えます。

加賀がいつになく冷静さを失い、人間的な面を見せるのも、この作品ならでは。

いろんな意味での萩原の苦悩が見え、その後の彼がどのような決断をするのかを考えると辛くなる作品です。

最後に

東野圭吾著「嘘をもうひとつだけ」の感想でした。

大人気ベストセラー作家の東野圭吾氏ですが、私は今回の作品が2冊目です。

やはり、引き込まれ、あっという間に読み終えてしまうほど面白いです!

何冊が読み待ち積読本の中に、東野圭吾作品があるので、次は長編を読むのが楽しみです。