『豆の上で眠る』感想 著者 湊かなえ|本ものって何ですか?

こんにちは。

はるき ゆかです。

 

昨日、湊かなえ著「豆の上で眠る」読み終わりました。

本書317ページ辺りから、心臓がドキドキしてきます。

そして、想像の上を行く結末に、本書のカバー裏に書かれている通り「足元から頽れる衝撃」を受けました。

「豆の上で眠る」あらすじ

結衣子が小学一年生のとき、姉の万佑子が失踪した。

不審な白い車、スーパーの駐車場に残された万佑子の麦わら帽子、街に蔓延する変質者の噂、友人の目撃証言。

母親の春花を始めとして、家族は必死に万佑子を探すが、見つからないまま二年の年月が経ったその日、万佑子を名乗る一人の少女が帰ってきた。

その少女を、どうしても万佑子だと思えない結衣子。

万佑子が帰ってきたことを喜ぶ家族だったが、結衣子だけはかすかな違和感をぬぐい切れなかった。

それは、大学生になった今でも。

お姉ちゃん、あなたは本当に本物なの?

そして、ラストには驚愕の真実が解き明かされるーー。

えんどうまめの上でねたおひめさま

アンデルセン童話の中に、「えんどうまめの上にねたおひめさま」という物語があります。

以下のようなあらすじです。

ある国の王子さまが、自分の妻となる本当のお姫さまを見つけたいと思っていました。

そして、后妃があることを考えだします。

えんどうまめの上に羽根布団を何枚も重ねて積み上げ、本当のお姫さまなら、えんどうまめに気づくはずだと。

ある日、身なりの貧しい少女がお城にやって来ます。

この少女をえんどうまめの上に何枚もの羽根布団の敷いたお布団で寝かせて、目覚めたときに少女に寝心地を聞くのです。

すると少女は「何か固いものが背中にあたって良く眠れませんでした」と答え、この少女は本当のお姫さまだとされるのでした。

 

失踪する前の結衣子は、姉の万佑子にこの物語を読んでもらうのが大好きでした。

二人は何枚も重ねた布団の下にまめがあったら、本当に気がつくのかを実験してみたり、姉妹は二人だけしか知らない秘密をたくさん持っているとても仲の良い姉妹でした。

姉の万佑子は、お人形さんのように可愛らしく体も弱く、元気で活発な結衣子とはあまり似ていないのですが、結衣子は万佑子ちゃんが大好きでした。

母の愛と残酷さと

物語は、大学生になった結衣子が実家に帰郷する場面から始まり、姉の万佑子がいなくなる前からいなくなった日、そして、今までを回想する形で始まります。

 

万佑子が失踪してから、母親の春花は、さまざまな方法で万佑子を探し出そうと必死になります。

ある意味、手段を選ばず…。

それは、母親としては当たり前のことなのかもしれません。

しかし、春花のやり方は、妹の結衣子を犠牲にするものでした。

 

これは、読んでいて結衣子が可哀想でなりませんでした…。

 

私自身も同じような経験があって、今なら母の気持ちもわからなくはないのですが、子供の目から見ればそれはとても不安で辛いものです。

 

万佑子は小さい頃から体が弱かったこともあり、いつも母に気にかけられていました。

しかしそれは、妹の結衣子よりも可愛がっていたというよりは心配していただけで、結衣子が可愛がられていなかったわけではないと思うのですが、小さな結衣子にはそのようには見えませんでした。

母は自分より万佑子ちゃんが好きなのだと…。

 

そして、万佑子が失踪してから少しづつ周囲の状況が落ち着いて来たある日、母は白い小さな猫を家に迎えます。

その猫はブランカと名付けられ、結衣子にとても懐いていました。

ブランカは家猫なのですが、何かというと「失踪」します。

そして、そのたびに結衣子は、母にブランカを探しに行かされます。

自分が母に利用されていることを、結衣子はわかっていましたが、断ることが出来ません。

 

小学生でも、大人の考えていることは容易に想像することが出来ます。

この辺りは母親の愛情と冷酷さを如実に表しており、とても悲しく辛いエピソードだと思います。

結衣子が感じていた違和感

結衣子はずっと万佑子のことを「万佑子ちゃん」と呼んでいて、お姉ちゃんとは呼んでいません。

しかし、帰ってきた姉のことは「お姉ちゃん」と呼んでいます。

 

結衣子は、DNA鑑定という科学的な根拠を示されても、どうしてもこの「お姉ちゃん」を「万佑子ちゃん」だと確信することができません。

万佑子ちゃんと自分しか知らないはずのこともこの見知らぬ少女は知っているのに、どうしても感じずにはいられない違和感に、結衣子は自分を責めてはやはり万佑子ちゃんじゃないと思い直し…を繰り返します。

 

その違和感は、ラストシーンで明かされる真実を知ったときに、読者にもはっきりとわかります。

ふとんの下のまめに違和感を感じたお姫さまのように。

姉妹とは、一体何なのだろう?

 

本書には、何組かの「姉妹」が登場します。

私は姉も妹もいないので、本当の感覚は理解できないのですが、異性の兄弟姉妹と「姉妹」とは何か違う絆のようなものがあるのではないでしょうか。

本書の結末を知ったとき、結衣子が感じた問いかけを読者も同じように問いかけることになると思います。

全ての真実を知った結衣子は、これからどうなってしまうのか…。

うまく収まったように見せかけてしまったことで、結衣子にとっては何一つ解決しなくなってしまったのではないかと思えてしまうのです。

最後に

湊かなえ著「豆の上で眠る」の感想でした。

読後感は、複雑です。

これから先の結衣子がどうなってしまうのか…心配でならないからです。

しかし、このドキドキ感はミステリー小説としては秀逸です。

おすすめの一冊です!