こんにちは。
はるき ゆかです。
昨日の夜、辻村深月著「ぼくのメジャースプーン」読み終わりました。
小学四年生の「ぼく」は、闘うことを決めた。
仲良しのふみちゃんのために。
「ぼくのメジャースプーン」 あらすじ
ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった__。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に一度だけ。これはぼくの闘いだ。
[引用元]講談社文庫「ぼくのメジャースプーン」裏表紙
ふみちゃんのこと
ふみちゃんは頭が良くて、たくさんの習い事をしていて、お母さんはお習字の先生です。
本をたくさん読んでいて、いろんなことを知っています。
そして、ふみちゃんは度の強い眼鏡をかけているので、あまり可愛く見えません。(「ぼく」は可愛いと思っているのですが)
ふみちゃんは、宿題や自習時間も真面目にやりますが、お友達に勉強を教えてあげたり自習時間に話しかけてくる人がいれば、無視したりはしません。
学校で飼っているうさぎの世話も率先してやるし、他の人が係の日も早めに学校に来て、係の子が来ない日はふみちゃんが世話をします。
しかし、お世話の日を忘れて学校に来なかった人を責めることもしません。
ふみちゃんは、まだ小学校の四年生ですが、クラスの他の子よりきっと早く大人になっていたのだと思います。
明るくて、知っていることを「言いたがり」だけど、出しゃばりではないのです。
本当の大人でもそういう人は、なかなかいるものではありません。
そんなふみちゃんが、ある日、とても悲しく怖ろしい事件に巻き込まれてしまい、PTSDのため心と言葉を失ってしまうのです。
普段のふみちゃんの行動や、人や動物への優しさを考えると、どれほど心が大きく傷つけられただろうと思います。
人間の中には、自分より弱い立場や力のないものを痛めつけて優越感にひたる輩がいます。
口では偉そうなことを言いながら、実は誰よりも臆病で卑怯な人間です。
「ぼく」の大好きなふみちゃんは、そんな卑怯者のせいで、今、ただうつろな目をして、あんなにおしゃべりだったのに、一言も口を聞くこともなく、視線を合わせてもくれなくなっているのです。
どうすれば、元のふみちゃんに戻ってくれるだろう…と「ぼく」はずっと考えています。
ぼくの「力」
小学校の二年生のときのことです。
ふみちゃんのピアノの発表会に招待された日、「ぼく」は、自分にある「力」があることを偶然知ります。
「ぼく」は、無意識のうちに、ふみちゃんにその力を使っていたのを、「ぼく」のお母さんに見つかってしまうのです。
「ぼく」の一族の中には、ときどきこの力を持って生まれて来る者がいるらしいのです。
ここしばらく、能力者は生まれて来ていなかったので、お母さんの驚きは相当なものだったでしょう。
しかし、お母さんは、「ぼく」にその力を使ってほしくないと思っています。
お母さんが「ぼく」の力を恐れる気持ちは、とてもよくわかります。
必ずしもその力が、良い方向に使われるとは限らないからです。
「ぼく」は、お母さんに二度と使わないことを約束するのですが…。
ぼくと「悪の王様」との闘い
「ぼく」は、ふみちゃんから心を奪った「悪の王様」と闘う決意をします。
そのために、禁じられていた力を、一度だけ使ってしまいます。
それは、闘いのスタートラインに立つために使った力です。
「ぼく」のお母さんの親戚には、一人だけ「ぼく」と同じ力を持っている人がいます。
その人に「ぼく」の力について教えてもらうことになりました。
その人は、テレビにも評論家として出ている大学の先生で、秋山先生といいます。
「悪の王様」と対決する前の一週間で、秋山先生に『力の先生』になってもらうのです。
秋山先生は、とても優しく穏やかですが、力の使い方についてはとても厳しい。
秋山先生も、今までに何度もその力を使ったことがあるようですが、最後に使ったのは二年前です。
そして、それ以来、使わなくなります。
秋山先生は、『敗北』したのです…。
「ぼく」は、一週間のうちに、秋山先生から多くを学びます。
正しい使い方、有効な使い方、そして「悪の王様」と闘うときの注意点。
力を使うときの「匙加減(さじかげん)」はとても大切なのです。
秋山先生は、「ぼく」のお母さんから、「ぼく」がその力を使わないようにすることを教えてほしいと言われているのですが、先生は「ぼく」の決意を理解してくれているようです。
そして、お母さんは、
自分で判断がつかないうちは、絶対にその力を使っちゃ駄目。約束して。ちゃんと『先生』の言うことを聞いて、勉強してきて。その上でそれを使うかどうか、使うとしたらどう使うのかを、しっかり教わって、決めなさい(「ぼくのメジャースプーン」本文より引用)
そう言って、「ぼく」を先生の元へ送り出してくれました。
このようにして、「ぼく」は力の使い方を身に付けて行きます。
まだ小学四年生なのに、「ぼく」はとても賢く意志が強く、読んでいると涙が出そうになります。
そして、本書にはいくつもの伏線が張られています。
最後に、私たち読者は「そうだったのか」と気がつき、さらに感動するのです。
「ぼく」の闘いは、とても危険で命に関わるものでした。
それでも、「ぼく」は闘いに挑みます。
なぜ、そこまでして「ぼく」は闘うのか。
それは、ふみちゃんのためだけでなく、「ぼく」自身の闘いでもあったからです。
ラストシーンのふみちゃんの後ろ姿に、感動で心が震えました。
それは、これからまた、ふみちゃんと「ぼく」の楽しい日々を予感させてくれるものでした。
最後に
辻村深月著「ぼくのメジャースプーン」の感想でした。
メジャースプーンは、ふみちゃんから「ぼく」が預かっている大切な宝物です。
勇気ある一人の少年の闘いに、どうぞ感動してください。
おすすめの一冊です!
以下の記事で、辻村深月著「ツナグ」の感想を書いています。
よろしければ、併せてご覧になってください。
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