「蟻の菜園-アントガーデンー」読書感想 著者 柚月裕子|獣以下の父親

こんにちは。

はるき ゆかです。

 

柚月裕子著「蟻の菜園ーアントガーデン」、読み終わりました。

獣(ケダモノ)以下の父親と暮らした姉妹の悲しく壮絶な物語。

どんな親に育てられるかで、子供の人生は大きく左右されます。

子供は親を選べない…。

本作の事件の全ての発端は、この父親にあります。

「蟻の菜園ーアントガーデンー」の読書感想 はじめに

あらすじ

結婚詐欺の容疑で介護士の円藤冬香が逮捕された。婚活サイトで彼女と知り合った複数の男性が相次いで死亡していたのだ。しかし冬香は容疑を否認、アリバイも完璧だった。美貌の冬香の身にいったい何があったのか。関心を抱いたフリーライターの今林由美が冬香の過去を追い北陸に向かうと、30年前に起きたある未成年事件にたどり着く。由美は、父親を刺した少女と冬香の関連を疑うが、証拠がなく暗礁に乗り上げてしまう……。

[引用元]角川文庫「蟻の菜園ーアントガーデン」裏表紙

登場人物

円藤冬香
結婚詐欺容疑で逮捕された43歳の独身女性。冬香の周囲で不審死を遂げた男性が複数いる。稀にみる美貌の持ち主。職業は介護福祉士。

今林由美
フリーライター。栄公出版を寿退社している。現在は離婚して栄公出版のニュース週刊誌「ポインター」で記事を書いている。

長谷川康子
栄公出版のニュース週刊誌「ポインター」編集長。由美の同期。

片芝敬
千葉の地方新聞社・千葉新報の報道記者。ぶっきらぼうだが、顔が広く多くの情報網を駆使して由美と共に事件を追う。

及川省吾
円藤冬香の中学の同級生。

沢越早紀
実の父親から虐待を受けている。二度目にいのちの電話をかけてきたのち、東尋坊の崖っぷちでサンダルを残し、行方不明。

沢越冬香
早紀の妹。ワゴン車の中にいたところを保護され、児童養護施設に。

沢越剛
早紀と冬香の父親。アルコール依存症。娘二人を虐待していた。早紀に足を刺されたあと、アルコール依存症治療施設に送られるが…。

山村兵吾
三国町の駐在所の警察官。

与野井啓介
自殺の名所である東尋坊のある三国町役場の児童福祉課職員。命のボランティア団体「あしたの光」に参加している。家には「いのちの電話」が設置されている。

与野井幸江
与野井啓介の妻で、児童福祉士で養護施設の職員。夫の啓介と同じくあたたかく優しい人柄。

古森美幸
三国町役場町民課の職員。「あしたの光」会員。

江田知代
鎌倉の由比ガ浜に住むセレブ主婦。夫は東京で数軒のレストランを経営。

海谷基樹
千葉県警捜査一課員。

フリーライター・今林由美

今林由美は、結婚前に勤めていた栄公出版のニュース週刊誌「ポインター」で記事を書くフリーのライターです。

寿退社をしたのち、30代半ばで離婚。

今は古巣で、外注のライターという仕事で生計を立てています。

そんな由美が今、記事にしようとしているのが「美貌の結婚詐欺師・円藤冬香」が起こした事件。

円藤冬香の周囲の男性が連続死

円藤冬香は、介護福祉士として働く43歳の独身女性で、結婚詐欺疑惑で逮捕されました。

冬香の周囲には、婚活サイトで知り合った男性が相次いで亡くなっており、その死にも関わっているのではないかと警察はにらんでいます。

冬香は、類まれなる美貌の持ち主で、その気になれば富裕層の男性との結婚も可能なはずなのに、なぜこのような事件を起こしたのか…。

由美は、円藤冬香に深く興味を抱きます。

円藤冬香のアリバイは完璧

円藤冬花は、かなり怪しいのですが、鉄壁のアリバイがあります。

このアリバイの裏には、悲しい姉妹の秘密があったのです。

 

事件の全ての真相が明らかになったとき、私たち読者は驚愕します。

北陸の田舎町の姉妹

小さな姉妹は、福井県の北部、観光地として有名な東尋坊がある三国町に、父親と三人で暮らしています。

暮らしていると言っても、家を持たずワゴン車の中で寝起きする日々。

虐待の日々

姉妹は、父親から虐待を受けていました。

ネグレクト、暴力、暴言…。

寒い北陸の地で暮らしているというのに、洋服は数枚しか持っておらず、冬はワゴン車の中でカビと埃の匂いがする毛布に二人でくるまってじっと耐えていました。

もちろん、学校に行かせてもらえるわけもなく、アルコール依存症の父親の暴行に怯えながら暮らしています。

 

「学校に行きたい」と訴える被虐待児」多いですが、この沢越姉妹は無戸籍で、「学校」というもの自体が何なのかを知りません。

東尋坊の命の電話

東尋坊の近くの公衆電話には、十円玉がたくさん置かれています。

東尋坊は観光名所であるとともに、自殺の名所でもあります。

今、まさに東尋坊から海に飛び込み、命を絶とうとする人を止めるためにこの10円玉は設置されています。

人は命を絶とうとするとき、人の優しさに触れると思いとどまることがあるようです。

 

身も心もボロボロになっている人…。

そんな人を、何とかして生きる道に戻してあげたいと真剣に考えてくれる人がいるのです。

与野井啓介・幸江夫妻のように。

早紀の行方

早紀は、父親から女の子として一番辛い虐待を受けていました。

そして、父をカッターで刺し、逃げ出したのです。

極寒の地である三国町の夜に、10歳の女の子が一人で、公衆電話からいのちの電話をかける…それを考えだけで苦しくなります。

 

そして、早紀はしばらくして、東尋坊の崖っぷちに片方のサンダルだけを置いて失踪してしまうのです。

警察も、早紀はもう命を落としてしまったと判断します。

二人称が使われている第4章

本作は、6つの章に分かれています。

今林由美を主軸にした時間軸が現在の奇数章と過去の物語を描く偶数章から構成されています。

第4章からは二人称の語り

第4章からは、「あなた」という二人称でストーリーが語られています。

この「あなた」とは一体誰なのか。

本書の中で、これは最も興味深いところです。

最後に、その「あなた」が誰なのかがわかったとき、総毛立つ思いでした。

人の優しさと後悔

円藤冬花のアリバイを、結果的に鉄壁にしたことの裏には、人の「優しさ」という秘密が隠されています。

そのことが、優しい人には、一生忘れられない後悔にもつながっていきます。

優しい人だからこそ、後悔するのです。

「蟻の菜園ーアントガーデンー」の感想 最後に

柚月裕子著「蟻の菜園ーアントガーデン」の感想でした。

本作は、ネタバレしてしまうのはもったいないので、今回はネタバレ無しです。

ぜひ、ご自身で読んで、推理し、最後に明かされる謎に、衝撃を受け、私と同じように総毛立ってくださいw

とにかく、おすすめのミステリー小説です!