こんにちは。
はるき ゆかです。
先ほど、湊かなえ著「サファイア」読み終わりました。
「真珠」「ルビー」「ダイヤモンド」「猫目石」「ムーンストーン」「サファイア」「ガーネット」と、7つ宝石がタイトルに冠された短編集です。
湊かなえ作品は後味が悪いのか?
湊かなえ作品は、読後感が嫌な気持ちになる作品が多いと言われています。
そのようなミステリー小説を「イヤミス」というそうです。
確かにそういった印象の作品は多いのかもしれませんが、この短編集はそうではありませんでした。
あくまでも私の読後感ですが。
真珠
この作品は、読み始め一体これは誰と誰の会話なのだろう?という疑問が生じます。
そして、読む進めて行くうちに薄っすらと何かが見え始め、最後に「そういうことか」と理解することが出来ます。
湊かなえ作品は、母と娘の関係を描いた作品が多いですが、この作品もそのひとつです。
ちょっと自意識過剰な狸顔のおばさんの正体が、最後には明らかになるドキドキ感が素晴らしい。
ルビー
東京に住む姉が、両親と妹が住む生まれ故郷の島に久しぶりに帰ってきます。
その実家の前に、ある「特別な」有料老人ホームが建設されたことから…。
姉妹の会話が読んでいて、とても小気味よい。
微妙なお年頃の姉妹の思惑がこのあとどうなっていくのか…続きを知りたくなります。
ダイヤモンド
少しファンタジックな趣の物語です。
題材はわりとよくある残酷な女性の男性への仕打ち。
そこに「鶴の恩返し」的な要素が入って来る不思議なストーリーです。
男女とも、お見合いパーティには要注意です。
猫目石
とても仲の良い両親と娘の三人家族。
お隣の坂口さんとはずっと顔を合わせたこともなかった三人ですが、ある日、坂口さんちの猫ちゃん迷子事件が起こります。
その手助けをしたことから、仲良し三人家族には、それぞれ秘密があることがわかり…。
少しコミカルなテイストの短編ミステリーですが、コミカルに描かれているからこそ、ゾッとします。
ムーンストーン
幸せな結婚生活を送っていた「わたし」は、あることがきっかけで今は不幸のどん底にいます。
そして、そんな「わたし」を救うために目の前に現れたのは、中学時代の同級生だったのですが…。
現在と中学生時代の回想が交互に描かれていきますが、ラスト近くに「そういうことか!」とハッとさせられる展開です。
本書の中では、最も読後感のよい短編だと思います。
サファイア
表題作である「サファイア」です。
慎ましく礼儀正しく生きて来た主人公は、運命の男性と巡り合い、幸せの真っ只中にいました。
それがある日をさかいに、不幸のどん底に突き落とされる、とても切ない物語です。
憎しみや妬み嫉み…そんな負の感情で溢れる結末です。
しかし、この「サファイア」は、本書の最後の短編「ガーネット」の連作として書かれています。
ガーネット
「ガーネット」の主人公は、新人作家の紺野マミ。
冒頭で、この新人作家・紺野マミは、湊かなえ氏自身のことなのでは?と思わせられ、ドキリとします。
そして紺野マミは、「サファイア」の主人公でもあります。
「サファイア」の中では、憎しみや罪悪感に苛まれていた主人公が、ある人物との出会いで憎しみから逃れ、光の中へ歩き出そうとする姿が描かれています。
紺野マミの次回作が、光にあふれたものでありますように…と願いたくなります。
最後に
人の人生は、それほどハッピーエンドばかりではないから、私自身も小説の中くらいは幸せな気持ちで読み終わりたいという気持ちはあります。
しかし、湊かなえ氏の作品は、イヤミスの代名詞のように言われていますが、ただ「後味が悪い」だけではないと思います。
本書では、その憎しみや罪悪感や妬み嫉みの先にある一すじの光が描かれているのです。
イヤミスの先を読み探りたいあなたへ、おすすめの一冊です。