『あなたの不幸は蜜の味』感想|6人の女流作家のイヤミス傑作選

こんにちは。

はるき ゆかです。

 

一昨日の夜「あなたの不幸は蜜の味」読み終わりました。

6人の女性ミステリー作家のイヤミス傑作選です。

後味の悪さ6連発です。

石蕗南地区の放火 辻村深月

あらすじ

財団法人町村公共相互共済地方支部で働く主人公・笙子は36歳の独身女性。

ある日、実家の目の前にある消防団の詰所が放火される。

仕事でおもむいた笙子は、消防団の大林に再会する。

以前、消防団との合コンに参加し、大林という少しさえない男に気に入られた笙子は、断りきずれず一度だけ横浜でデートをしたことがあったのだ。

気まずい思いを抱えながらも仕事を行う笙子だったが、再び放火事件が起こり…。

感想

気まずい…。

いろんな意味で気まずさが漂う作品です。

36歳の独身女性の自意識の過剰さを容赦なく目の前に突き出され、読者は何とも言えない後味の悪さを感じさせられます。

ちょっと悲しくて気恥ずかしくて読者は苦笑いしてしまう…まさにイヤミスです。

贅肉 小池真理子

あらすじ

美人で音楽的な才能に優れ頭も良い姉・葉子と3歳年下の平凡な妹・裕美の姉妹。

裕美はそんな何でも持っている姉の葉子に嫉妬心を抱いていたが、葉子は脆弱な精神の持ち主だった。

そんな完璧な葉子が、母の死を嘆き悲しみ、恋人との別れなどから過食に走ってしまう。

食べることだけが楽しみになってしまったかつて美しかった葉子は、見るも無残な肥満体となり、裕美に依存し、自堕落な生活を続けていく…。

感想

美しかった葉子が異常な太り方をしていく描写は、同じ女性として恐怖以外の何物でもありません。

また、妹の裕美の醜く太り続ける葉子に対する優越感も、ちょっとわからなくもないと思ってしまう私自身にも嫌悪感を覚えてしまいます。

そして、姉に対して嫌悪感を抱きながらも共依存の関係となっていく姉妹の姿は、本当に気持ちが沈み込みます。

結末は、何とも皮肉なのですが…タイトルの「贅肉」がぴたりとはまるイヤミスです。

エトワール 沼田まほかる

あらすじ

主人公の「私」は、職場の上司である吉澤と不倫関係にあった。

吉澤は妻の奈緒子と離婚して、私に一緒になろうと言い、共に暮らし始める。

不倫関係から幸せを手にするはずだった私は、自分の身の回りにちらつく奈緒子の影に、次第に追い詰められていく…。

感想

正直、イヤミスどころではありません。

私はこの6作品の中で、最も「怖い」と感じた作品です。

ラストは、ちょっと変な声が出てしまうほどの恐怖でした。

略奪愛の罪悪感から「私」が精神的に追い詰められていく…というだけなら、「普通のイヤミス」なのですが…。

結末として突きつけられるある事実が怖すぎます。

どうしてそんなことを?という不可解な男性の心理も、女性としては理解しがたい得体の知れなさにただただ恐怖します。

実家 新津きよみ

あらすじ

夫と二人で年金暮らしをしている主人公・篠田房子は65歳の初老女性。

実家を継いでいた兄が亡くなり相続の話になるが、自分には財産分与がされないことがわかる。

さらに、夫が浮気をしており、証拠を突きつけた房子に、あっさりと浮気を認める夫。

3人の子供は、誰も頼りにならない。

自分の人生とは一体何だったのか…と追い詰められた房子が最後にとった行動とは…。

感想

この作品は、あまりにも悲しすぎて…。

子育てに家事、姑との関係…やっと老後を落ち着いて送れるはずだった平凡な主婦・房子。

身勝手な夫や子供とのやりとり。

そのあまりの報われなさに、女性の人生ってこんなものなんだろうか…と痛感させられます。

そして、自暴自棄気味になったあとに取った房子の行動と、そのあとにわかる残酷な結末。

 

また、私自身が「嫌だ、嫌だ」と思ったのが、男というのはいくつになっても…ということ。

子供たちの身勝手さもそうですが、年金暮らしをする年齢でもまだ浮気をするような夫でなければ、房子はまだ救われたのに…と残念すぎます。

最後の一行が、房子と共に読者を途方に暮れさせる、どうにも救われない気持ちにさせられるイヤミスです。

祝辞 乃南アサ

あらすじ

敦行は、もうすぐ結婚しようとしている。

相手は、職場で知り合った無邪気で可愛い摩美という24歳の女性である。

ある日、摩美の大親友である朋子を紹介したいと言われ、3人で会うことになった。

朋子は、明るく二人を祝福するのだが、その翌日から失語症になってしまう。

敦行と摩美が、それぞれの友人を誘って小旅行に出かける計画を立て、朋子も共に楽しい時間を過ごしていたはずなのだが…。

そして、結婚式の祝辞で朋子は…。

感想

女性同士の友情は、もちろん存在すると私は信じています。

しかし、これは実際にやる人はなかなかいないでしょうが、心の中では「ありそう」な話かも。

実は、私自身が友人の結婚式の二次会でこれと同じような経験をしています。

私の場合は、男女が逆転しているのと二次会だったこともあり、その場は何とか収まりましたが…何とも後味の悪い経験でした。

あれが、実際のお式であったとしたら…怖すぎます。

作品の中で、3人で会う約束をしている朋子が、待ち合わせ時間に大幅に遅れてきたあたりから、これは…と思っていたのですが、やっぱりそうか…という感想です。

自分が出席する結婚式でこんなことが本当に起こったら…と思うと本当に怖ろしいと思わせる、ある意味、身近な恐怖を感じさせるイヤミスです。

おたすけぶち 宮部みゆき

あらすじ

10年前に飲酒運転の事故で兄を亡くしている相馬孝子は、一人、事故現場である高原の観光地を訪れていた。

事故に遭った4人が落ちた「おたすけ淵」から、兄の遺体だけが見つかっていない。

土産物屋でたまたま見つけた草木染のハンカチのサインから、もしかしたら兄は生きているのかもしれないと思った孝子は、ハンカチが作られている「小花井村」を訪ねようとする。

しかし、地元の人から聞くとこの村は排他的で近づくことが難しいと言われ…。

感想

宮部みゆき氏の作品は、ハートウォーミングな作品が多い印象ですが、イヤミスも多く書かれているようです。

本作品は、少し「怖い昔話」的な要素もあり、ミステリーとホラーの中間的な作品という印象です。

現代の日本社会の中にも、まだこんなに排他的で、村の中だけの常識で「犯罪」と呼ばれるものが当たり前に行われているとしたら…本当に怖いです。

田舎で育った友人たちの中には、その村だけの「掟」のようなものが実際に存在し、都会で暮らしていてもそれを不思議なことだと感じずに従っているという話を聞かされます。

そのため、この物語も、決して荒唐無稽な話ではないのかもしれないと思うとさらに怖さが増幅します。

孝子はその後…おそらく…。

時代小説も多く執筆されている宮部みゆき氏ならではの「イヤミス」です。

最後に

イヤミス傑作選「あなたの不幸は蜜の味」の感想でした。

一冊の中に、それぞれ6人の作家の持ち味が生かされた「イヤミス」傑作選です。

一話読み終わるごとに嫌な後味がいつまでも後を引きますが、とにかく面白いです。

6人の中では、沼田まほかる氏だけは初めて読む作家だったので、他の作品もぜひ読んでみたいと思いました。

「イヤミス」って面白い!

一冊で6度おいしいおすすめの一冊です。