『ランチのアッコちゃん』感想 著者 柚木麻子|元気が出るおいしい小説!

こんにちは。

はるき ゆかです。

 

昨日の夜、柚木麻子著「ランチのアッコちゃん」読み終わりました。

4つの短編からなる本書は、とにかく元気になれる本です!

シリーズ化されているようなので、全制覇したいです。

ランチのアッコちゃん

教材専門出版社「木と雲社」の派遣OL澤田美智子は、最近彼氏に振られて食欲減退気味。

そんなとき、黒川敦子部長から「一週間ランチを交換しよう」と持ち掛けられます。

黒川部長は身長175㎝で黒髪のおかっぱ頭で名前が敦子ということもあり、某大物歌手を彷彿とさせる容姿から「アッコさん」と呼ばれています。

面と向かってそう呼ぶ人はいませんが…。

 

アッコさんのランチは1週間、お店もメニューも決まっているので、毎日美智子の手製のお弁当と自分のランチを交換しようと言うのです。

初めは気乗りしない美智子でしたが、アッコさんの1週間のランチコースをたどるうちに、だんだん元気が湧いてきます。

そして、このランチ取り替えっこの1週間で、社内では威圧的でバリバリ仕事も出来る近寄りがたいアッコ女史の人望の厚さ、可愛らしい一面などを知ることとなった美智子。

そして、美智子は、何だか少しづつ気力がわいてくる自分に気がついて…。

 

アッコさんは、本当の意味でのサバサバ系女子。

読者自身も、前向きにしてくれます。

そして、食べることの大切さやおいしいものが人心を癒す尊いものであることもアッコさんは教えてくれるのでした。

夜食のアッコちゃん

美智子の今の派遣先は大手貿易商社「高潮物産」です。

アッコさんと働いていた教材専門出版社「木と雲社」は、残念ながら倒産してしまったのです。

 

2月の寒空の下、公園で一人ランチをしていた美智子。

新しい派遣先でも、美智子はバレンタインチョコのことで社員と派遣の板挟みになっていました。

そんな美智子がアッコさんとランチ交換をしていた頃を懐かしんでいると、美智子の前に現れたのが、ワゴン車で移動販売をするアッコ女史。

 

アッコさんと働きたい!という美智子に、アッコさんは面接代わりに1週間私と働いてみなさいと提案します。

そこから、深夜の移動販売「東京ポトフ」でのお手伝いが始まって…。

 

とにかく、バイタリティあふれたアッコさんに圧倒されます。

長年勤めた「木と雲社」が倒産しても、アッコさんの前向きな姿勢は一切変わりません。

需要と供給。

少し頭を働かせれば、ビジネスチャンスは見つかる物なのだと元気をもらえます。

そして、何より深夜のポトフのおいしそうなことと言ったら!

あたたかい本格的なポトフとアッコさんのあたたかさがシンクロする、こちらも元気をもらえる短編となっています。

女が惚れる女、アッコさんです!

夜の大捜査先生

今年で30歳の満島野百合は、今日も合コンで出会いのチャンスを狙っていますが…。

女子高生時代、バリバリのギャルだった野百合も、今では清楚系OL。

 

日焼けサロン、へそピアス、安室奈美恵、プリクラ、ルーズソックス…。

あの頃が「私が最も輝いていた時代だ」と野百合は考えていました。

そろそろ合コンに疲れ始めていた野百合は、その合コン会場である懐かしい人物に再会して…。

 

私自身は、野百合とは、年代も違うし女子高生時代の楽しかったことも違うので、感覚的にはあまり共感できないのですが「こんな青春もあったのか」と…。

まさに、大都会・東京の女子高生。

とにかく「女子高生」が注目を浴びた時代でした。

 

この短編の中にも、アッコさんの「東京ポトフ」は登場します。

もちろん、美智子と共に。

人の心をいやすのは、見た目はおしゃれだけど干からびたカルパッチョではなく、あたたかい食べ物なのです。

ゆとりのビアガーデン

ビールジョッキ

物語は「インターヴィレッジ」の社長・豊田雅之の回想シーンから始まります。

佐々木玲実が、たった3か月だけ勤めた総合ネット商社「インターヴィレッジ」を辞めて、もうすぐ一年になろとしていました。

「インターヴィレッジ」は、大手総合商社「中村山商事」の社内ベンチャー企業で、豊田雅之はこの会社の社長です。

深夜までの残業はもちろん、徹夜で仕事をする社員も多数おり、新入社員は次々と辞めていきますが、その中でも、佐々木玲実は、誰よりも仕事が出来ない所謂「ゆとり世代」でした。

しかし、佐々木玲実は、やる気だけは人一倍で、たくさんの企画書を提出してきましたが、荒唐無稽なものばかりで使い物にはなりません。

そんな佐々木玲実が、一年ぶりに雅之の前に姿を現して…。

 

本書の中で、一番私としては響いた作品がこの「ゆとりのビアガーデン」でした。

玲実の前向きすぎるくらいの前向きさと行動力とコミュ力、失敗を人のせいにしない、失敗さえも自分の糧としてしまうところ、本当にすばらしいです。

 

小さなベンチャー企業でただ残業に明け暮れる仕事より、自分でビジネスを立ち上げるのにぴったりな人材が多くいるのが、世間で言われる「ゆとり」世代の人々なのではないでしょうか。

 

会社に雇われることには失敗したけれど、それでも自分に出来ることを見つけるために一年間頑張って見つけた仕事に全力で邁進する玲実の姿には、見習うべきところがたくさんあります。

 

そして、この作品にもアッコさんの「東京ポトフ」はチラリと登場します。

そして、美智子らしい行動が見られるのもうれしいところ。

 

バブル入社組とゆとり世代。

どうしても、他の世代から揶揄されやすいのがこの二つの世代。

 

偏った見方を捨てて、風通し良く、もう一度ビルの屋上から世界を眺めてみたいなと思わせてくれる作品です。

最後に

柚木麻子著「ランチのアッコちゃん」の感想でした。

柚木麻子氏の著作を読んだのは「BUTTER」に続き、二作目です。

「BUTTER」はある殺人事件がモチーフになっていることから重いテーマではありましたが、おいしそうな食べ物で溢れているところが共通するところでした。

本書はシリーズ化されているようなので、また元気をもらいたいときに読みたいと思います。

正社員、派遣、特に起業を考えている女子にはおすすめの一冊です!