『輝く夜』感想 著者 百田尚樹|ハートフルでロマンティックな物語たち

こんにちは。

はるき ゆかです。

31日の夜に百田尚樹著『輝く夜』読み終わりました。

「魔法の万年筆」「猫」「ケーキ」「タクシー」「サンタクロース」からなるロマンティックでハートフルな5つの短編集です。

『輝く夜』 魔法の万年筆

クリスマスイブの夜にリストラを言い渡された34歳のOL恵子の物語。

悲しい自分の身の上と寒空に物乞いをするホームレスを重ね合わせ、ちょっとした親切心から、恵子はホームレスの男性に、温かいミルクとハンバーガーをプレゼントします。

そのお礼にと、そのホームレスから「魔法の万年筆」をプレゼントされます。

それは万年筆ではなく、ただの鉛筆です。

半信半疑ながら、恵子は自分にはとても慎ましい願い事を、他の2つは自分以外の人の幸せを書きます。

そして、恵子は思いもよらぬ幸せを手にします。

普通、3つ願い事が叶うとしたら、普通は私利私欲に走ってしまうと思いますが、恵子は自分以外の人を思い、願い事を書きます。

しかし、そのことが最終的には恵子自身にも幸せをもたらすことになるのでした。

都会の片隅でひっそりと生きる平凡なOL・恵子。

幸せになれてよかった!

『輝く夜』猫

今、注目の人気ベンチャー企業に派遣されている派遣社員の青木雅子は、27歳。

クリスマスイブの夜も残業をしています。

特に予定もないし、憧れの社長・石丸と共に仕事だとは言え、クリスマスイブに一緒にいられることを幸せに感じています。

雅子は、4年ほど派遣社員として働いていますが、この石丸の会社ほど働きやすい会社はなかったようです。

自由で新しい社風の会社で、恵子はこの会社で正社員として働けたらどれだけ素敵だろうと考えています。

そんな雅子には、愛猫のみーちゃんがいます。

ひょんなことから、みーちゃんの話を石丸にしたことから…。

可愛いトラ猫

私はこの『輝く夜』の中で、この物語が最も好きなお話です。

私自身も、元派遣社員だったこともあり、雅子がペットと暮らしていることなど(私はどちらかというと犬派ですがw)にとても共感を覚えました。

雅子は、本当はとても美しい女性なのだと思います。

しかし、それに本人は気づいていません。

雅子は、1つ目の幸せを手に入れられそうなところまで来るのですが、最後はもっと素晴らしい幸せを手にします。

最後の石丸社長の言葉には、いい意味で鳥肌が立ちます。

『輝く夜』 ケーキ

杉野真理子は、まだ20歳の美容師ですが、末期の癌患者です。

孤児院で育ち、中学を卒業してから美容学校に入り、美容師になりました。

これから、美容師として大きく羽ばたくはずだったのに…。

この短い物語の中に、2回の大団円があります。

とても、不思議なテイストの物語ですが、感動もたくさん詰め込まれています。

フジTVの「世にも奇妙な物語」でやってほしいなぁと思いました。(もしかしたらもうやってるかも?)

少し切ないけれど、真理子にとっては、これでよかったんだね…と感じさせてくれる物語です。

『輝く夜』 タクシー

休みを取って、友人の和美と沖縄旅行をしているのは香川依子24歳。

鞄の縫製工場でお針子をしていますが、沖縄のバカンスの間だけはCAだということにしようと和美に言われ、押し切られてしまいます。

二人は、沖縄で二人の男性に出会います。

彼らは、東京のTV局に勤めているといいます。

要領のいい和美は、沖縄だけのアバンチュールを楽しみますが、不器用な依子は、そのあとも、二人のうちの一人、島尾というTVマンと東京に帰ってからも何度も会うことになってしまい…。

都会の美しい夜景

東京に帰ってからも、何度か会っているうちに本気で島尾に恋をしてしまうのですが、始めに嘘をついてしまったことが、依子を苦しめます。

しかし、最後は思わぬ展開で依子は幸せをつかみます。

偶然と偶然が重なり、こんなことある?と思う部分もありますが、全部「クリスマスイブの魔法」として、楽しめてしまうから不思議です。

『輝く夜』 サンタクロース

『輝く夜』最後は、「サンタクロース」です。

どの物語も、幸せをつかみきれない女性がヒロインとして登場しますが、この「サンタクロース」のヒロイン和子は、すでに幸せをつかんでいます。

かつては、人生のどん底にいた和子。

あるクリスマスイブの夜、和子は自らの命を絶とうと街を徘徊しています。

気づくとそこには、小さな教会があって、優しそうな笑顔のサンタクロースが…。

和子は、そこで悩みを打ち明け、命を絶つことを止めて生きていくことを決意します。

そのことで、和子は現在の夫と出会い、今では幸せな家庭を築いているのですが…。

人生投げ出さず懸命に生きていれば、神様は見ていてくれる…そんな希望を持たせてくれる物語だと言えるのかもしれません。

私はクリスチャンではありませんが、大学はミッション系だったので、この物語はとても心が動かされました。

私の家の近くには、教会があります。

小学生の頃から、バザーには参加していました。

最近では、クリスマスツリーやサンタクロースのアイシングクッキーを出させていただいたこともあります。

日曜学校に、また通ってみようかと考えているところです。

『輝く夜』 最後に

百田尚樹氏の小説は、登場人物の会話がとても柔らかくあたたかいのは、どの小説においても共通しています。

この『輝く夜』もまたそれをとても強く感じました。

街の片隅で、ひっそりと懸命に生きている平凡な女の子たちを幸せにしてくれてありがとう!という気持ちでいっぱいになりました。