『あまからカルテット』感想 著者 柚木麻子|この素晴らしき女の友情

こんにちは。

はるき ゆかです。

 

一昨日、柚木麻子著「あまからカルテット」読み終わりました。

とても、素敵な4人のアラサー女子の友情の物語です。

読後感も最高に爽快な連作短編集です!

4人のアラサー女子の物語

咲子、由香子、満里子、薫子は、女子中学時代からの同級生で、親友同士のアラサー4人組。

咲子はピアノの講師、由香子は料理が上手な主婦ブロガー、満里子は美容部員、薫子は雑誌の編集者です。

4人は見た目も性格も違いますが、中学二年生から月に一度はティーパーティーを開いています。

そんな4人がそれぞれに人生に悩み、仕事に恋につまづきそうになりながらお互い励まし合い「おいしいもの」にまつわるエピソードと共に成長していく連作短編集です。

恋する稲荷寿司

あらすじ

咲子は、箱入り娘のピアノ講師。

ふんわりとした優しい性格の女性です。

そんな咲子が、ピアノ教室の生徒の保護者たちに誘われ、花火大会に出かけます。

そこで、お稲荷さんを差し出してくれた素敵な男性に巡り合って…。

感想

過去の悲しい恋愛のせいで、恋に臆病になっていた咲子が、ひとめぼれ。

ピアノ教室の保護者の中には、咲子に縁談を持ってくる母親もいますが、彼女は花火大会の夜に知り合った名前も知らない男性が気になって仕方がありません。

その男性からもらったとてもおいしい9個の稲荷ずしを手掛かりに、「稲荷寿司の君」大捜索が始まります。

 

咲子は月1のティーパーティで、親友3人にそのことを話すのですが、グルメ雑誌「月刊 男の玉手箱」編集者の薫子が先輩編集者のバキさんといっしょに東京中のお稲荷さんを食べ歩きして…。

 

物語に出てくるお稲荷さんが本当においしそう!

一度食べてみたいと誰もが思うはずです。

そして、薫子の行動力にも脱帽ですが、手掛かりを見つけたのはおっとりした主婦の由香子でした。

そして、そんな咲子と共に薫子にも春がやって来ます。

 

この物語は、4人のプロフィール紹介的なものも兼ねています。

全く、環境も性格も異なる4人ですが、心がほっこり、そしておいしそうなお稲荷さんに癒されます。

はにかむ甘食

あらすじ

由香子は、4人の中で唯一の既婚者でお料理上手。

ご主人さまは、今、海外に単身赴任中です。

『ごろぱんだな毎日 』というブログを書いている人気主婦ブロガーでもあります。

そんな由香子にエッセイ本の出版の話を薫子が持ってきます。

由香子のお料理の原点は、甘食だといいます。

その甘食には子供の頃の懐かしい思い出がたくさんあって…。

感想

ブログなどで人気が出た主婦ブロガーの方は多いですが、そこにつきものなのがやっかみ半分の中傷コメント。

優しくておっとりした由香子には、それは耐えられないものでした。

そして、どんどん自信を失くしていくのです。

 

その気持ち、すごくよくわかります。

私もシュガークラフトのブログを書いていたときに、いろいろ中傷コメントを書き込まれました。

それも、同じ人が名前を替えて何回も…。

放っておけばいいのですが、やはりすごく傷つきます。

由香子のようなお嬢様育ちの女性なら、精神的にまいってしまうのは当然。

 

そして、親友3人は、由香子の元気を取り戻すために由香子のお料理のルーツで、幼い頃に遊んだ「ノンちゃん」という呼び名しか手掛かりのない幼馴染の子がくれた甘食のレシピ探しに奔走します。

そして、結果がとても感動的なのです!

灯台下暗し。

胸さわぎのハイボール

あらすじ

週に1度は合コン三昧の満里子でしたが、今は合コンで知り合った高須雄太と交際中です。

しかし、時を同じくして満里子はデパートに入っている老舗化粧品メーカーの店長になりました。

今まで以上にやることが増え、高須くんともあまり会えない日が続いています。

これではいけないと思った満里子は、ある日、手料理を作って高須くんの家で待つことにしました。

それなのに、しこたま酔って帰ってきた高須くんは、あろうことか「雪子、ハイボール!」と、別の女性の名前を呼んで…。

感想

ちょっと切ない物語です。

美女ぞろいの4人組ですが、特に超絶美人で女王様気質の満里子。

高須くんは、小柄でメガネのあまり冴えない男子なのですが、センスが良くて優しいところを満里子は好きになったようです。

満里子は、もうそろそろ結婚して落ち着きたいな…と思っていたところでした。

専業主婦になって、習い事や家事を完璧にこなすのもありだなと思っていた矢先の出来事。

高須くんは、必死で誤解だと弁明するのですが…。

しかし、好きだからこそ、わかってしまう彼の本当の気持ち…。

 

この物語にも、おしゃれでこだわりのハイボール、ハムカツ、手作りらっきょう、ポテトサラダなどたくさんのおいしいものが登場します。

お料理の描写は、柚木麻子氏の本領発揮といったところでしょうか。

「ああ、たべたい!」と思わせてくれるほど素晴らしいです。

私は柚木麻子氏の作品は「BUTTER」が初めてだったのですが、趣は全く違う小説ですが、おいしそうな食べ物の描写はどちらも素晴らしく、読んでいるとどうしてもお腹が空いてしまいます。

てんてこ舞いにラー油

あらすじ

雑誌「男の玉手箱」出版部から書籍課に異動になった薫子。

そして、「胸さわぎのハイボール」でバキさん(本名:膳場恭一郎)と結婚して、4人組二人目の既婚者になりました。

「稲荷寿司の君」探しから親しくなって、今は夫となったバキさんは「男の玉手箱」の編集長になっています。

バキさんは、付き合いだした頃は95㎏を超す巨漢でしたが、編集長になって忙しくなったため、数か月で30㎏も痩せて、今はスリムで素敵な旦那様に変身したのでした。

しかし…お互いに忙しく、すれ違い。

完璧主義で幼い頃の心の傷から人に頼ることが出来ない性格の薫子は、どんどん追い詰められていきます。

そして、ある日、ご近所からのおすそ分けなのか、ラー油の瓶がドアノブにかけてあって…。

感想

薫子の人に頼れない性格…すごく気持ちがわかって、読んでいて苦しくなるほどでした。

仕事が忙しくて休めないと、精神的にも肉体的にも追い詰められてしまいます。

親友3人もとても心配してくれますが、どうしても、夫のバキさんや親友にさえも頼ることができない薫子。

 

ある日、薫子が帰宅するとマンションのドアノブに何かどろりとした液体が入った瓶が掛けられています。

ご近所の奥様のどなたかのおすそわけかと思った薫子は、翌日、ご近所の奥様に思い切って聞いてみますが、誰からでもないようで…。

 

送り主が誰なのかに気づいたのが、料理研究となって大活躍中の由香子でした。

ちょっと素敵なエピソードと懐の広いバキさん、人に頼ることができるようになった薫子。

みんなが幸せになってほしいなと、読んでいる側まで巻き込まれる素敵な物語です。

 

そして、子供時代の経験でその人の性質や考え方って決まるんだなと改めて感じました。

しかし、たとえそれがよい結果をもたらさなくても、あとからでも変わることも出来ると教えてくれた物語でもあります。

おせちでカルテット

あらすじ

もう、人に頼ること、助けてもらうことに躊躇しなくなった薫子は、元旦にお姑さんが上京する日に立派なおせちを完成させるため、3人の親友たちに一重づつ手伝ってもらうことに。

しかし、大晦日の東京は大雪に見舞われ、4人がそれぞれ偶然に足止めをくう事態に。

薫子のお姑さんは、ちょっと皮肉っぽくて厳しい人でした。

一体、薫子のおせちはどうなってしまうのか。

この最後の一編には、4人がさらに女性として強くなるエピソードがあふれています。

感想

最後の一編は、とにかくハラハラドキドキの物語が展開されるのですが、最終的には嘘みたいにいろんな偶然が重なり、全てが丸く収まって幸せな気持ちにさせてくれます。

そして、私が一番うれしかったのは、失恋した満里子に新たな恋の予感がみられることです。

満里子さまなら、きっとうまくいきそうです。

4人のアラサー女子の友情の物語。

おいしそうで、うらやましくて、ちょっと切ない素敵な連作短編集でした!

最後に

「友情」とは、まるで男性だけのもののように語られることがありますが、そんなことはありません。

女性の友情だってしっかり存在しています。

解説でエッセイストの酒井順子氏も書かれていますが、結婚、出産、仕事をしている、仕事をしていない…いろんな環境の変化があって会えない期間があっても、この4人の友情は続いて行くと思います。

やっぱり、この作品は女性におすすめですが、男性にも女子の友情について知ってほしいので、全ての人におすすめしたい一冊です。

読後感のさわやかさがとにかく素晴らしいのです!