「夫が怖くてたまらない」感想 著者 梶山寿子|外からは見えない家庭内暴力

こんにちは。

はるき ゆかです。

 

昨日の夜、梶山寿子著「夫が怖くてたまらない」を読み終わりました。

私の家では、幸い父も兄も一切暴力を振るう人ではないので、こんなことが現実に行われていることに、言葉を失いました。

しかし、「夫が怖くてたまらない」という女性たちの叫びは、本書によって私にはしっかり届きました。

自分自身も周囲もDVを気づかない

今の時代でも、日本では「妻は夫に従うもの」という考えが少なからずあります。

そのため、夫に暴力を振るわれても、自分が至らない妻だから…と、我慢している人が多いようです。

自分がDVを受けているという自覚がない人も。

 

また、家庭内での暴力は、当事者以外には気づかれないことが多いです。

そのため、被害者が口を開かない限り、外部の人に助けを求めることが出来ません。

 

こういう事実を知ると、結婚って一体何なのだろうと思ってしまいます。

愛し合った二人が、共に暮らし家庭を築いていくこと。

しかし、一部の人からすると、結婚するということで「相手が自分のものになった」という考えに至る人も多いのです。

結婚したからといって、妻は夫の所有物になるわけではありません。

妻と夫が逆の立場になる場合もありますが、少数だと言われています。

やはり、腕力はどうしたって男性に女性は勝てないのです。

 

もちろん、DVは事実婚や恋人同士の間でも行われます。

どんな形であれ、暴力が容認されることなどあってはならないのです。

 

また、DVには「ハネムーン期」というものがあるそうです。

夫が、暴力を振るった後やモラハラ発言で妻を傷つけたあとに、突然優しい言葉をかけたり、高価なプレゼントをしたり、「君がいなければ生きていけない」などと言ったりするのです。

そして、妻は「この人は私がついていてあげなければ。彼も苦しんでいるのだ」と思ってしまうようです。

一度は愛し合って結婚した相手なので、情が移るのはとてもよくわかりますが、この「ハネムーン期」が、DVから逃れるためには、大きな落とし穴と言えるでしょう。

DVは暴力だけではない

DVは暴力だけとは限りません。

モラル・ハラスメントです。

精神的に痛めつけられ、人格を否定されることはどれほど辛いことでしょうか。

暴言や脅迫ストーカー行為子供への虐待などを行うことで、マインドコントロールされてしまうのです。

身体を傷つけられることも耐えがたいことですが、精神的な暴力はPTSDとなって深く心に傷を残します。

そして、本書によると、身体の傷は外側から見るとわかりますが、精神的な暴力は外から見えないので、被害者がどんどん孤立していってしまうそうです。

 

本書を読んで、私は初めて、モラル・ハラスメントを受けている友達がたくさんいることを知りました。

今まではそれほど気にしていなかった友達との会話の中で、

「お前はバカだから俺の言うことを聞いておけばいい」

「お前は一人では何もできない。全て俺に報告しろ」

と、ご主人に言われている人がいて、これは完全にモラハラだと思いました。

他にも、同窓会には絶対に行かせてもらえない友達もいますし、会社の飲み会も夫の許しが出たときだけしか参加できない人も。

そのくせ、子育ても家事も一切協力しないそうです。

 

専業主婦なら、

「家事は100%完璧にこなせ」

「ずっと家で寝てれば生活できるなんてうらやましいな」

「誰のおかげで生活できていると思っているんだ」

そのくせ、外で働くことは絶対に許してくれないのです。

 

真剣に離婚を考えている友達もいますが、ほとんどは「私は、一人では生きていけないから、どんなことを言われても仕方がない」と思っています。

モラハラを受けている友達にも「ハネムーン期」があるようですし、本人がそれを受け入れているのに、他人の私がどうこういうことはできないな…と思っていましたが、これからは出来るだけ「それはモラハラだよ」と言ってあげられるようになりたいと思います。

私が経験したあるDVについて

私自身の両親は、特別仲が良かったとは言えませんが、幸い、父が母に暴力を振るうこともありませんでしたし、ときどき思わずモラハラ的発言をすることがあっても、すぐに謝っていたようです。

そのため、実際にその現場を見たわけではないのですが、私にはこんな経験があります。

 

私は、大学生の頃、二年間ほど家庭教師のアルバイトをしていたことがあります。

生徒さんは、私が通っていた大学の中等部を受験する小学四年生の女の子Mちゃんでした。

Mちゃんは、身体が弱かったこともあって学校も休みがち。

そして、母の知人の紹介で、私が家庭教師をすることになったのです。

Mちゃんの親御さんは、不動産会社を経営されていて、裕福な家庭を築かれているようでした。

しかし、父親がDV加害者だったのです。

被害者であるMちゃんのお母さまは、とてもほっそりとした美しい人でした。

 

ある日、私がMちゃんのお家に行くと、お母さまの顔が腫れあがり、手足に痣が出来ていました。

私が「どうされたんですか?」と聞くと、

「ちょっと階段から落ちてしまって」と目を伏せて言われました。

その後も、何度かお母さまがケガをされているのを見たことがあります。

そして、ある日、Mちゃんから「パパがママを叩いたり、ママの悪口を言ったりするの」と聞かされました。

まだ20歳だった私は、どうしたらいいのかわからず、私の母に相談してみたのですが、「よそのお家のことに口出ししてはダメ」と言われてしまいました…。

 

その頃は、まだDVという言葉もそれほど世間に浸透していませんでした。

私は、Mちゃんの話を聞いてあげることしかできませんでした。

「一度、親戚の人に相談してみたら?」と言ったのですが、親戚の人には「パパがそんなことするはずがない。ママがちゃんとしていないから悪い」と言われたそうです。

Mちゃんのお母さまがあまりにも美しい人だったので、父親はいつも浮気や他の男に盗られることを心配していたようです。

Mちゃんが言うには、父親はお酒を飲むと何時間もその日のお母さまの行動を報告させ、気に入らないと雑誌で顔を殴ったりしていたそうです。

Mちゃんが泣きながら止めても、父親は「ママが悪いんだよ。だからパパが教えてあげているんだから心配しなくて大丈夫だよ」と笑いながら言ったとか…。

父親はMちゃんのことはとても可愛がっており、一切、手をあげることはなかったことが唯一の救いです。

しかし、父親が母親を殴るところを見せられることが、10歳の少女にとってどれだけ辛く苦しいことだったか…。

 

そして、Mちゃんから、相談されて2か月ほど経った頃のことです。

Mちゃんのお母さまが、二階の窓から父親に突き落とされてしまったのです。

手足と骨盤骨折の重傷でした。

近所の方が、叫び声を聞いて警察にも通報されたようです。

私は、その事件後すぐに家庭教師も辞めることになり、Mちゃんはお母さまの退院を待ってお母さまのご実家に身を寄せることになりました。

しかし、その後も父親のストーカー行為などで悩まされているという手紙をMちゃんからもらいました。

 

私は、このとき何が出来ただろうと、今も考えます。

DV被害者のシェルターなども全く知識はありませんでしたし、その頃、日本にはそういった施設があったかどうかさえわかりません。

さらに、私自身も、母に言われたように「よそのお家のことに口出ししてはいけない」と思っていました。

夫から暴力を受けていたMちゃんのお母さま自身が、助けを求めていなかったから…ということもありますが、助けを求めたくても出来なかったことを、今なら理解できます。

 

夫婦間で、ちょっとした諍いがあるのは普通のことですが、ケガを負うほどの暴力を振るわれることは完全にDVです。

ハネムーン期に惑わされず、被害者は声をあげることが大切です。

決して、自分を責めないでください。

最後に

梶山寿子著「夫が怖くてたまらない」の感想でした。

愛し合って結婚したはずなのに、こんな風に思うことになるなんて、本当に辛いことですね…。

本書は、私が、初めてDVについて本気で考えるきっかけとなってくれました。