こんにちは。
はるき ゆかです。
昨日、小野一光著「連続殺人犯」読み終わりました。
日本で起こった10の殺人事件に関するドキュメンタリーです。
当然のことですが、殺人犯にもいろんな動機やその後の在り方が存在します。
本書は、著者が直接犯人に面会したり、被害者遺族を含めその周囲の人々との対話から作り上げられた本です。
10の連続殺人事件
日本国内で起こった10の連続殺人事件のひとつづの感想を書いていきます。
大牟田連続4人殺人事件 北村孝紘
◆事件のあらまし◆
大牟田市で起こった金銭目当てで4人の罪もない人々を殺害した暴力団一家の次男。元力士の北村孝紘は、その凶悪な事件とは裏腹に無邪気な笑顔を見せて…。
北村孝紘は、元力士で、家族は全員暴力団関係者一家の次男。
家族全員の犯行で、4人ともが死刑が確定しているのも前例のない事件です。
しかし、北村孝紘は、著者や信頼した人には無邪気な笑顔を見せ、将来は入れ墨の彫師になりたいと夢を語っています。
彼の家庭環境は異質ではありますが、なぜここまで残忍な犯行が行えたのでしょうか…。
今までは暴力団一家の暴走した大量殺人…としか思っていませんでしたが、本書を読んでよくわからなくなりました。
私とは別世界の話だと思っていましたが、そうとは言い切れなくなってしまいました。
北九州監禁連続殺人事件 松永太
◆事件のあらまし◆
著者に「悪魔とは、意外とこんな屈託のない存在なのかもしれない……」と思わせた松永太。自分自身は手を汚さず、マインドコントロールで7人の人々を監禁し、殺し合いをさせた。死刑判決が下りてもその饒舌でにこやかに語る罪の意識のなさに恐怖する。
松永太については、先日読んだ豊田正義著「消えた一家」で感想を書きましたが、やはり「悪魔」としか言いようがありません。
いろいろな残虐な犯人に対して「悪魔」という言葉を使いますが、これほどはっきりとした「悪魔」もいないのではないかと思います。
著者も文中で述べられていますが、
悪魔とは、意外とこんなふうに屈託のない存在なのかもしれない、と。
本書「連続殺人犯」より引用
この10の連続殺人はどれも怖ろしい事件ですが、この松永太ほど怖い犯罪者が他にいるのだろうかと思わせられます。
以下の記事でこの事件について書かれた本の感想を書いています。
よろしければ併せててご覧になってみてください。
北九州連続監禁殺人事件ー『消された一家』感想 著者 豊田正義
秋田自動連続殺人事件 畠山鈴香
◆事件のあらまし◆
幼い頃から盗癖と虚言癖のあった畠山鈴香。実の娘と隣に住む男児を殺害した。今も事件当時の彼女の怒り狂った表情は忘れられない。その怒りはどこからくるのか。また、事故とされた娘の死を殺人だと言い出した理由は何だったのか。
この事件については、とてもよく覚えています。
連日、ワイドショーやニュースで取り上げられ、畠山鈴香の怒った表情が今も目に焼き付いています。
そして、娘を失った「被害者」の母であったはずの彼女に、とても「気まずい気持ち」をもって、「この人が殺したんだな…」と思っていました。
畠山鈴香も学生時代、いじめにあっていたようで、また父親からのDVもあったようです。
私が最も記憶に残っているのは、豪憲くんを殺害したとき、ご両親の悲しみに「まだ他にも子供がいるのに…」と鈴香が日記に記していたことです。
この感覚がやはり尋常ではないと思います。
福岡3女性連続強盗殺人事件 鈴木泰徳
◆事件のあらまし◆
面識のない3人の罪もない女性を殺害した鈴木泰徳。被害女性の携帯からアダルトサイトを利用し、事件が発覚。殺害時は仕事のトラック配送業務中だった。このあまりの罪の意識のなさはどこからくるのか。
とにかく、ここまで全く罪の意識が感じられない犯罪者も珍しいのではないでしょうか。
松永太が「悪魔」なら、鈴木泰徳は「クズ」です。
裁判官への不満、警察の取り調べへの不満、そして、妻への責任転嫁…。
自ら借りた闇金からの取り立てで精神的に参っていたので、そのストレスからわけがわからなくなって起こした犯行だという意味不明な言い分。
こんな人間に大切な家族を奪われた遺族の気持ちを考えると、他人ながら怒りを覚えます。
大阪2児虐待死事件 下村早苗
◆事件のあらまし◆
真夏のマンションに自身の子供2人を放置し、死亡させた下村早苗。子供を放置しながら遊び歩き、SNSに投稿する。そんな下村早苗自身も虐待された過去を持っていた。ここにもまた虐待の連鎖が…。
下村早苗は、育児放棄によって二人の我が子を死に追いやっています。
そして、早苗自身も子供の頃、虐待されていたとのことです。
虐待の連鎖がここにも…。
また、下村早苗は、解離性障害があったのではないかと言われています。
幼少期の虐待の経験から解離性障害を引き起こすことは、よく知られています。
もちろん、二人の子供を置き去りにしたことは許されることではありませんが、早苗の父親が彼女のことを見捨てていないことが一つの救いだと感じています。
大阪姉妹殺人事件 山地悠紀夫
◆事件のあらまし◆
少年時代に母を殺害し、その「楽しさ」が忘れられず、罪なき二人の姉妹を殺害した山地悠紀夫。快楽殺人を主張するが、それが本心だったのか。死刑執行された今となっては誰にもわからない。
この事件に関しても、以前に読んだ池谷孝司著「死刑でいいです」で感想を書きましたが、山地悠紀夫も幼少期育児放棄されています。
母親を殺害したことは短絡的ではありますが、ある意味、理解できなくはないのですが…。
やはり、罪もない二人の姉妹をなぜ殺害したのか…。
いつ、誰が被害者になるかわからないのだと感じさせられる事件です。
以下の記事で山地悠紀夫の事件について書かれた本の感想を書いています。
よろしければ、併せてご覧になってみてください。
福岡一家4人殺人事件 魏巍
◆事件のあらまし◆
わずかな金のために一家4人を惨殺した中国人留学生グループの一人、魏巍。彼の周囲の評価は、まじめで勉強家で努力家。親思いで色白で小柄な青年はなぜこのような事件を起こしてしまったのか…。
この事件については、何か裏があるのではないかと思えて仕方がありません。
一家4人を殺害した3人のうちの一人である魏巍(ウェイウェイ)。
他の2人は事件後中国に帰って処罰を受けていますが、魏巍だけは、日本を出国できなかったようです。
親思いで、日本の大学で勉強したかったまじめな青年がどうしてこんな犯罪を犯してしまったのか…残念で仕方がありません。
両親の嘆きや彼の心からの悔悟の気持ちに、嘘はないと感じました。
中洲スナックママ連続保険金殺人事件 高橋裕子
◆事件のあらまし◆
子供の頃から、周囲に「白雪姫」と呼ばれた美しい音大出身の高橋裕子。二人の夫を生命保険金目当てで殺害し、関係を持った男性を次々と恐喝していった。「白雪姫」はどのようにして「魔女」へと変貌していったのか。
スナックのママ時代の写真を見ても、とても感じのいい本当に美しい高橋裕子。
少女時代から「白雪姫」ともてはやされていたのも頷けます。
殺害した二人の夫には多額の生命保険がかけられていて「保険金の魔力」に勝てなかったのか…。
一歩踏み外してしまうと人は、こんなに変わってしまうものなのでしょうか。
尼崎連続変死事件 角田美代子
◆事件のあらまし◆
ちょっとしたトラブルから家庭に入り込み、マインドコントロールで財産を奪い、「ファミリー」を築いていった角田美代子。わかっているだけでも、彼女の周りでは8人の人間が亡くなっている。事件が解明する前に自分はさっさと自らの命を絶った「モンスター」。
上記で書いている松永太と同様、角田美代子も、マインドコントロールで人々を殺し合わせています。
しかし、逮捕されるとすぐに自らの命を絶っているところが松永太とは異なるところです。
人はなぜマインドコントロールされてしまうのでしょうか。
これは、本当に誰が被害者になってもおかしくない事件だったと思います。
近畿連続青酸死事件 筧千佐子
◆事件のあらまし◆
映画・ドラマ化もされた「後妻業の女」のモデルとなった筧千佐子。彼女の周囲では20年間に10人以上の高齢男性が亡くなっている。どこにでもいそうな普通のおばさんが起こした鵺のような目の奥に潜む殺意とは…。
筧千佐子は、見た目は高橋裕子とは異なり、本当にただの普通の「おばさん」です。
そんな彼女の周囲で、20年間に10人以上の高齢者男性が亡くなっているのは、普通ではありません。
筧千佐子は、大手都市銀行に勤めていた経験があり、その知識を生かし投資をしていましたが、8~10億円と言われる遺産相続もほぼ溶かしてしまっているといいます。
やはり、お金と殺人は結びついているものなのでしょうか…。
人の命を奪うことの罪悪感
この10の連続殺人の中で、7つがお金が絡んだ連続殺人事件です。
お金のためなら、人の命を奪うことの罪悪感が希薄になる…ということなのでしょうか。
私の知人に、筧千佐子に憧れている人がいます。
「後妻業をしたい!」と宣言しています。
確かに、彼女は人にお金を出させることをあまり気にしていません。
今のところ、保険金殺人は犯していないと思いますが、何人かの男性の人生を確実に狂わせています…。
私みたいな普通の中の普通な人間の近くにも、そういう人がいるということは、いつ自分が被害者になるかもしれないということです。
そして、またその逆も…絶対にないとは言えないのかもしれません。
本書を読んで、初めてそう感じました。
最後に
小野一光著「連続殺人」の感想でした。
今まで生きてきて、「殺人」というものを身近に感じたことはありませんでした。
しかし、この3年ほどの間に、一人だけ「殺人」を連想させる人に出会ってから、こういった殺人事件を扱う本を読むようになりました。
読書は楽しみだけでなく、戒めにも通じるものだと思います。