「ルパンの消息」読書感想 著者 横山秀夫|時効まであと24時間

こんにちは。

はるき ゆかです。

 

昨日の夜、横山秀夫著「ルパンの消息」読み終わりました。

女性教師の墜落死は自殺ではなく殺人だった?

時効まで二十四時間…果たして、事件は解決できるのか。

「ルパンの消息」 あらすじ

十五年前、自殺とされた女性教師の墜落死は実は殺人__。警視庁に入った一本のタレ込みで事件が息を吹き返す。当時、期末テスト奪取を計画した高校生三人が校舎内に忍び込んでいた。捜査陣が二つの事件の結び付きを辿っていくと、戦後最大の謎である三億円事件までもが絡んでくるのだった。時効まで二十四時間、事件は解明できるのか!?著者”幻の傑作”待望の文庫化。

[引用元]光文社文庫「ルパンの消息」裏表紙より

三人の高校生が計画した「ルパン作戦」

ちょっとワルの男子高校生三人組、喜多芳夫、竜見譲二郎、橘宗一

授業をさぼり、サンオクさんこと内海一矢が経営する「喫茶ルパン」に入りびたり、喫煙し、竜見に至っては高校生なのに雀荘でイカサマ麻雀を同じ高校の相馬弘と組んでやっています。

そのため、卒業できるかどうかの瀬戸際なのです。

ちなみに、「喫茶ルパン」のマスター・内海一矢のニックネームの「サンオク」とは、あの三億円事件の犯人のモンタージュにそっくりで、マスターは、犯人のさまざまな要件を満たしているのです。

実際、警察にも事情聴取を受けたこともあって…。

 

喜多、竜見、橘の三人は、夜中に学校に忍び込み、期末テストの試験問題を盗もうと計画します。

大泥棒のサンオクさんとたまり場の「喫茶ルパン」にちなんで、名付けて『ルパン作戦』

もちろん、三人は、サンオクさんを本気で三億円事件の犯人だと思っているわけではなく、「喫茶ルパン」に集まって、策を練る予定だから…という他愛もない理由から名付けているのですが…。

三人はそれぞれ個性的で、喜多は気が短く喧嘩っ早く、竜見は肉体派で単純、橘は物静かで頭脳派。

やるからには成功させなければと、三人は綿密な作戦を練ります。

 

しかし、この三人の少年は、悪さをしてばかりではなく、友人の悲しい死を経験し、貧しく小さな少女を優しくあたたかく見守る姿も見せてくれます。

 

それも、すべて十五年前のことです。

嶺舞子の秘密

そんな三人の不良男子高校生の計画実行と同じ日、この高校で、自殺事件が起こります。

自殺をしたのは、嶺舞子教諭

喜多らの学校の女性教師で、派手な美人でスタイル抜群、指導教科が英語であることから「グラマー」というニックネームをつけられています。

性格も明るく、美人で、人生を謳歌しているかのように見えた舞子が、失恋を苦にして、勤務する学校の屋上から飛び降り自殺をしてしまうのですが、その死が他殺であるという情報提供があったのです。

しかし、事件から十五年が経とうとしていました。

嶺舞子の自殺が、殺人事件であるなら、時効まであと一日と迫っていました。

 

今は、殺人の時効はなくなりましたが、本書が書かれた頃はまだ時効があったのです。

時効があった頃の警察の中で、どれだけの緊迫した時間が流れたことか、想像に難くないでしょう。

 

そんな嶺舞子には、「ある秘密」があって…。

三億円事件の時効

昭和五十年十二月九日夜、あと三時間で三億円事件の時効を迎えようとしていたとき、現在の強行班捜査第四係長・溝呂木義人は、「喫茶ルパン」のマスター内海に逮捕状を突き付けていました。

しかし、結局逮捕は執行されず、時効成立

時効成立から十五年が経った今も、溝呂木は、犯人は内海だと確信しているのです。

 

そして、嶺舞子の事件捜査の指揮官となった溝呂木。

偶然にも、今日は、三億円事件の時効と同じ日の十二月九日であることに気づきます。

 

どちらも溝呂木が担当する事件、三億円事件と嶺舞子殺人事件の時効の日付が同じ日だというのも、何かの因縁でしょうか。

この日にちが、あとあととても重要なことになっていくのです。

伏線の見事な回収

横山秀夫氏の作品は、どの作品もそうですが、物語のはじまりから、さまざまな伏線がはられています。

そして、物語が終わる頃には、その伏線が鮮やかなまでにすべて回収されていくのです。

本書も、それは例外ではなく、想像の遥か上を行く伏線の回収でした。

すごくすっきり、そして、感動します。

 

横山秀夫氏の作品の登場人物の名前はとても個性的な名前が多いのですが、それも伏線回収の際に、効果を発揮します。

私は、長編ミステリーを読んでいると、途中で登場人物の名前を忘れてしまうことがあります。(私だけかもしれませんが…)

しかし、横山氏の作品は個性的な名前が多いので、忘れることがほとんどないのです。

それが、横山氏が意図することなのかどうかはわかりませんが、私のような読者にとってはとてもわかりやすく「ああ!」と声が出てしまうほどです。

 

そして、ときどきミステリーを読んでいて感じる「あれ?あの人の〇〇はどうなったの?」という心地の悪さが、横山氏の作品には一切ありません。

それどころか、この「ルパンの消息」では、最後の最後まで「ああ、そうか!」とひざを打ちたくなるエピソードがたくさん出てきます。

その感じが、さらに横山氏の別の作品を読んでみたい!と思わせてくれるのです。

 

そして、警察の中での刑事同士のプライドのぶつかり合い、信頼しあう姿など、いろいろな警察官の姿を見ることもできます。

 

「ルパンの消息」というタイトルもまた素晴らしいです。

様々な伏線の回収と物語の読後感の良さ、ぜひ読んでみてください!

感想としては、ネタバレにならないように書いていますが、結末を言いたくてしょうがないくらいおもしろい作品です。

最後に

横山秀夫著「ルパンの消息」の感想でした。

今は亡くなった殺人の「時効」ですが、時効があった頃の警察の緊迫感をぜひ味わってみてください。

警察小説であり、青春小説とも言える、さまざまな世代の方におすすめの一冊です!