『チヨ子』感想 著者 宮部みゆき|さらりと読んでゾクッとする

こんにちは。

はるき ゆかです。

 

先ほど『チヨ子』読み終わりました。【ややネタバレ注意】

私は宮部みゆき氏の大ファンです。時代小説はもともと読まないのですが、時代小説以外は、長編・中短編のほぼ全て読破しています。宮部みゆき氏の作品で初めて読んだのは『火車』でした。悲しい物語ですがこちらもおすすめです。

そして、今回読んだ『チヨ子』「雪娘」「オモチャ」表題作の「チヨ子」「いしまくら」「聖痕」の五編の中短編集です。この中で最も宮部みゆきの真骨頂と思われるのは、私としては「いしまくら」でしょうか。

「雪娘」は、ラストに近づくにつれて、少しづつ「…え?」っとなってページを捲る手が固まりました。宮部みゆき氏の短編って、こういうしばらくページをめくれなくなるような「読者固まらせ感」が素晴らしい。本当は気づいていた少年。後悔も罪悪感もなかったけれど、長い時間をかけて現実を突きつけられる。神秘的な雪の描写とともに物語がホラーというよりファンタジー色を強めている短編です。

「オモチャ」は、なんだか寂しい気持ちにさせられます。私も経験がありますが、人が亡くなると突然本性を現す人たち、無責任な噂話。純粋な心にだけ見せてくれるものってあるんだなと思います。人は亡くなると生前いた場所にしばらく居続けるものなのでしょうか。少女の心がおじいちゃんに伝わり、早く天国へ行けるといいなと思いました。

「チヨ子」は、不思議でかわいいお話。これ、乃木坂46あたりのショートカットの可愛い子を主人公にして、フジテレビ「世にも奇妙な物語」でドラマ化してほしいなぁと思いました。そんな感じの不思議なお話だけれど、おどろおどろしい恐怖譚ではありません。私だったら、マルチーズの白い犬のぬいぐるみかなぁ?それとも、スヌーピーのぬいぐるみかな?と思いを馳せるのも楽しかった物語です。

「いしまくら」は、登場人物の描写も情景描写も、目に浮かぶようで、さすが宮部みゆき!という短編ミステリーです。ちょっと疲れた出版社勤務のお父さんと勝ち気で父親譲りの正義感の強い娘。顔まで浮かんできそうです。また、「いしまくら」は民間伝承の話なのですが、そういったことに関する宮部氏の造詣の深さも垣間見えて、ファンとしてはそれも楽しい短編でした。

「聖痕」は、他の短編とは、少し毛色の違うストーリーでした。中編です。初めは読み進めやすかったのですが、私の持っている知識では、ラストに近づくにつれて行きつ戻りつしながら読まなければいけませんでした。最近、読んでいた本が児童虐待やDV関連であったため、そちらに気持ちが傾きました。きちんと読みすすめるにはキリスト教についての基本的な知識も必要かなぁとwikiで調べながら読みました。

どちらかというと私は長編小説が好きなのですが、忙しい中、読書するには短編集は読みやすくておすすめです。電車の中やお買い物の後のちょっと休憩に一人でカフェに入ったときなど、さらりと読んでゾクッとしてみませんか?