『巻きぞえ』感想 著者 新津きよみ|まさかこんなことになるなんて

こんにちは。

はるき ゆかです。

 

昨日、新津きよみ著「巻きぞえ」読み終わりました。

デイリーサスペンスの女王と呼ばれる新津氏の短編ミステリー集です。

日常に潜む恐怖こそ怖ろしいと感じさせる7つの物語。

第一発見者

あらすじ

遺体の第一発見者になってしまった女性と見て見ぬふりをした女性二人の運命の分かれ道。

「正しいこと」をした方が損をする…そんな運命のいたずらの物語です。

感想

もし、自分が殺人事件の遺体の第一発見者になったらどうするだろう?

私には特に失うものもないので、おそらくすぐに警察に通報すると思います。

今のところ、警察に知られたくない秘密もありませんしw

しかし、もし遺体発見とは別に隠しておきたいことがあったら、見て見ぬふりをすることが「正解」の場合もあるのかもしれません。

運命というのは、どこでどう変わってしまうのか…平凡な主婦が遭遇する日常の恐怖です。

巻きぞえ

あらすじ

念願の一戸建てを手に入れたわたし。

元気で可愛い息子の遼太とパパの3人暮らしのわたしには、悲しい過去があった。

かつての恋人が、飛び降り自殺の巻きぞえにあっていたのだ。

しかし、それはただの「巻きぞえ」ではなく…。

感想

ときどき報道などでも、飛び降り自殺や電車の飛び込み自殺で、周囲の人が巻きぞえになったというニュースを聞くことがありますが、その巻きぞえが仕組まれたものであったら…。

最後に驚愕の結末が待っています。

途中、何度か不思議に思う周囲の反応があるのですが、その疑問も全て回収されます。

偶然を装った必然。

反対運動

あらすじ

生方千恵子は、嫌がらせにあっていた。

千恵子は、朝起きて家の前を掃除するのが日課になっているのだが、自宅の前に、毎日犬の排泄物やゴミが放置されているのだ。

千恵子には、「これは、私への嫌がらせだ」と確信する出来事があって…。

感想

テーマは「復讐」です。

誰にも人知れず抱えている闇があります。

平凡に、平和に暮らしているかに見える人々の心の中にある恨みや復讐心。

怖いですが、否定できない真実でもあります。

行旅死亡人

あらすじ

宮下志穂は、週に一度、役所に置いてある「官報」に目を通している。

行方不明の父親の消息を探すために、行旅死亡人(こうりょしぼうにん)の欄を確認しているのだ。

行旅死亡人とは、官報の一つの項目で、全国各地で人知れず亡くなった人の情報が載せられているのだった。

そんなある日、志穂の住むアパートの隣人の同い年の女性が突然亡くなって…。

感想

物語自体は、ハッピーエンドなのですが、私が怖いと思ったのは物語の中に出てくるある人の言動です。

家族というのは、血のつながりがなければそこまで非情なことができるものなのか…ということです。

特に、関係性に軋轢があったわけでもないのに、そこまで…。

しかし、主人公の志穂が最後に幸せになれたのは、その出来事を知ったからこそなのかもしれません。

二番目の妻

あらすじ

萩原奈津美は、現在一人暮らしの独身で管理栄養士の資格を持っている。

かつて結婚していた夫は重い腎臓病を患っていたが、腎臓移植で今は健康に暮らし、再婚も果たしているらしい。

その腎臓を提供したのは奈津美本人である。

しかし、移植手術後、二人の間に亀裂が生じ、離婚してしまったのだ。

二番目の妻は、その二人の「絆」に嫉妬していて…。

感想

確かに、自分が二番目の妻で、前妻の腎臓が夫の体の中にあるというのは複雑な気持ちになるのも理解できます。

腎臓を提供してもらったのに、離婚して再婚までしているなんて、ずいぶん虫のいい男の話だと思いましたが、離れてしまった心は仕方がありません。

結末は、背筋がぞくっとします。

嫉妬が人を「狂わせる」ことはよくあることでしょうが…。

ひき逃げ

あらすじ

岡田彩子は、小学校の臨時教師である。

本採用を目指しているのだが、なかなかうまくいかない。

そんなある日、仕事の帰りに道路に横たわる犬を車で轢いてしまう。

反対車線の車がはねた犬がこちらの車線に飛ばされてきたのだが、ちょうど恋人から携帯に電話が入り、よそ見をしていたのだった。

どちらの車も、相手の車のせいだと思い込もうとしているのだが、罪悪感に苛まれる。

そして、亡くなった犬飼い主が犯人探しを始めて…。

感想

悪いことをしていると、幸せにはなれないものなのだなとつくづく感じました。

そして、ついていない人は最後までついていない…。

相手が犬であっても、命を奪った罪は許されることではありません。

物語の中では、犯人探しをする飼い主をある意味「狂人」のように描かれていますが、犬好きな私からすると気持ちはとてもよくわかります。

もちろん、自分が同じ行動を取るかどうかと問われるとそれはまた別の話だとは思いますが…。

「因果応報」とはこのことだと思わせられる物語です。

解剖実習

あらすじ

畠山宏信・容子夫妻には、一人娘の久美がいる。

久美は成績優秀で、国立大の医学部の学生である。

宏信も容子も文系なのに、久美は昔から数学や理科が得意な理系だった。

そして、明日は久美にとって、初めての解剖実習の日だった。

この解剖実習で、自分は医者に向いていないと感じる学生が多いという。

昔から、注射でさえ苦手で泣いていた久美は大丈夫だろうかと心配する二人だったが…。

感想

「血は争えない」とはまさにこのことだと思います。

しかし、夫婦がそれを割り切っているのであれば、あとは娘の将来の幸せを願えばよいことなのではないかと思いました。

夫妻の杞憂である可能性もある…と思いたいです。

親子の絆は、血だけではないということです。

最後に

新津きよみ著「巻きぞえ」の感想でした。

どの作品も、平凡に暮らす人々の心に潜む闇が描かれています。

これはただの小説の中だけの話とは言い切れない、自分自身と重ね合わせてしまうミステリー集です。

とても読みやすくて怖いおすすめの一冊です!

 


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