「毒殺協奏曲」感想 著者 アミの会(仮)|毒殺は遠隔操作の殺人

こんにちは。

はるき ゆかです。

 

昨日、アミの会(仮)「毒殺協奏曲」読み終わりました。

今回は8人の作家による毒殺ミステリー。

それぞれの作家の個性あふれる短編集です。

伴奏者 永嶋恵美

あらすじ

中学校の文化祭での「毒殺未遂事件」

学校側は、合唱部の顧問・北上明菜先生(アッキーナ)が、点鼻薬と消毒液を取り違えてしまった事故として処理しようとしていた。

合唱部の部長は鞠香、親友の深雪はピアノの伴奏をしている。

 

倒れているアッキーナを発見したのは深雪で、消毒液が原因とは思えない…。

何か、他の毒?

深雪は、科学部との掛け持ち部員で、科学部顧問の大井優子先生(ゆうこりん)と北上先生は真逆のタイプだが仲がいいらしい。

校内では、さまざまな噂が飛び交っていた。

 

鞠香と幼馴染の吉野正樹、利根翔太郎、深雪は、4人で映画を観に行ったりと、仲良くしている。

深雪は吉野正樹に淡い恋心を抱いていて…。

そして、最近、祥太郎の様子がおかしい。

鞠香には10歳年上の姉がいたが、ある出来事を苦にして自殺していた。

今回の毒殺未遂事件と姉の死は関係があるのか…。

感想

中学生の人間関係も、なかなか複雑で様々な思いを抱きながら学校生活を送っていたな…と思い出しました。

中学生は、大人が思っている以上に大人なのです。

そして、先生によっては、本当に不届きな先生がいるものです。

 

物語は、とても複雑です。

姉の死に恨みを持った中学生が復讐しようとしていたかに見えますが、実は事件の真実は別のところにあって…。

ラストにタイトルの「伴奏者」のもう一つの意味が浮き上がってきます。

猫は毒殺に関与しない 柴田よしき

猫と女性

あらすじ

主人公の「わたし」は、桜川ひとみ。作家である。

最近、都心を離れて、神奈川県の某市、自然の多い場所で猫と一緒に暮らしている。

 

ひとみの同期で人気作家の四方幸江は、最近、自分をネットで誹謗中傷している人間がいることを知る。

その内容からして、同業者か自分に近しい人の中にいると考えている。

ひとみは、その「犯人」探しに、協力してほしいと四方に相談されたのだ。

そのため、ひとみの新居お披露目と称して、怪しい人間を招いて、ひとみの家で鍋パーティを開くことになった。

四方曰く、くつろいだ状態ならボロを出すのだというのだが…。

 

鍋パーティの出席者は、ひとみと四方以外に、四方ファンの書店員の神戸縁、四方の担当編集者の渡会真由、編集者の北山明美、作家の園田あきら、ひとみの担当編集者の秋本隆史、作家の柴崎景子、園田の担当編集者の久留米舞、四方の秘書・加川潤子。

鍋パーティが終わる頃、突然、神戸縁が腹痛を訴え、倒れてしまう…。

感想

とても、ユーモラスで、結末もとてもおもしろいです。

犯人は、とても意外な人で、さらに、当初の目的とは違った方向に物語が展開していくのも楽しいです。

犯人を推理する桜川ひとみの推理は間違えているのに、犯人を当ててしまうところも。

本書の8編の中では、唯一、おそらく誰も死なない作品で、笑いながら読める短編です。

罪を認めてください 新津きよみ

猫

あらすじ

薬剤師として、懸命に働いて来た正木直美は、現在、44歳で独身。さらに無職である。

どの職場でも、あまりにも正直すぎて不正や倫理観の欠如を見逃せない性格が裏目に出てしまったのだ。

両親はすでになく、今日は掃除のために、実家に帰って来ていた。

この家に戻ってきて、地元で薬剤師の仕事を探そうか…と、考えていたとき、庭に猫の亡骸を見つける。

猫は飼い猫で、首輪の情報から飼い主に連絡を取ると、すぐに亡骸を引き取りに来たのは、横森という70代くらいの女性だった。

横森には、猫を毒殺した犯人がわかっているというのだが…。

感想

一人暮らしの老女が、家族同然に可愛がっていた愛猫を毒殺されて「復讐」をする物語です。

しかし、その「復讐」は、ある意味、何よりも怖ろしい「毒殺」かもしれません。

家族同然の愛猫を殺された悲しみや恨みは、私自身に置き換えても、横森さんの気持ちはとてもよくわかります。

そして、この「復讐」の仕方が最も犯人へ大きなダメージを与えられるものだと思います。

 

人には、それぞれ大切なものが異なります。

自分にとっては、それほど大したものじゃないと思うものでも、その人にとっては命より大切なものだということもあるのです。

とても、怖い、切ない、悲しい物語です。

劇的な幕切れ 有栖川有栖

あらすじ

自殺サイトで知り合った男女。

共に死を選んだ二人だったが、突然、女が心変わりしてしまう。

服毒自殺を図るつもりで、毒を用意したのは女の方だった。

気が変わった女は、男に毒薬を渡す。

その後、男は…?

感想

アミの会(仮)に、ゲスト作家として登場した有栖川有栖氏の作品です。

男の心の変化、女の本当の目的、そして、最後の幕切れ…。

この短編の中で、何度も訪れるどんでん返しがすばらしいです。

ある意味、最も想像しやすい結末なのかもしれません。

しかし、その間に起こる男の心の変化に引きずられて、結末がとても怖ろしいものになっています。

ナザル 松村比呂美

あらすじ

水野希江は、生活が苦しく、切り詰めた毎日を送っている。

同じような生活を送るPTA仲間の松原瞳を、希江は勝手に親しみを感じて仲良くしていた。

そして、瞳の息子の瞬は、希江の息子の拓馬を含め、クラスの男子からいじめを受けていた。

 

そんなある日、希江は瞳を市民図書館で見かけた。

瞳は思いつめた表情で、ある本のコーナーを見ていた。

毒の不思議」「身近な毒」「毒キノコ」「神経毒の恐怖」…。

そして、瞳の家には、アルコール中毒の叔父・宏次朗がいる。

 

そんなある日、松原家が高級住宅街に引っ越すという話題がPTA会のグループLINEで送られてきた。

そして、宏次朗が食中毒で亡くなったというのだ。

希江は、図書館で瞳が毒についての本を見ていたすぐ後で、宏次朗が亡くなったことを疑問に思い、保険金殺人だと思い込む。

瞳の家まで問い詰めに行く希江だったが、瞳は叔父が株の取引で得たお金を残してくれたのだというが…。

感想

ナザルとは、インドの風習で可愛らしく生まれた子供は嫉妬されて、病気や早死にをすると言われており、わざと醜いほくろを顔に書いて邪視をさけるというものです。

瞳の息子の瞬が生まれたとき、インドに嫁いだ瞳の母が瞬に特殊なアイラインでほくろを書いたのだが、それを瞳が拭き取ってしまったため、瞬がいじめられたのかと、瞳は後悔しています。

 

瞳の叔父の宏次朗が言った「希江は人の不幸を餌にする人だ」という言葉が、まさにその通り。

さらに、希江は最後の言葉を二度言う癖があって、「〇〇でしょ。〇〇よね?」というのも、読んでてイラッときます。

こういう自分の不幸を人と比べて、自分より不幸だと思って安心するタイプのうっとうしい人がいます。

瞳は、瞬のいじめを避けたかったのと、そんな希江と縁を切りたかったのです。

希江は、最後までうっとうしい人のままでした。

最後の一行が、素晴らしいです。

吹雪の朝 小林泰三

吹雪

あらすじ

登美子は、台風が嫌いで、台風が来ないところに住みたかった。

台風は悪魔だ。

ある日、彼女にプロポーズしてくれた毅の実家は、台風が来ない地域だという。

登美子は即座にプロポーズをOKした。

そして、プロポーズのあと毅は、仕事を辞めて実家に帰ることに決めていると登美子に告白した。

毅の実家は、台風は来ないが、爆弾低気圧が来る地域だった。吹雪である。

 

そして、午後から吹雪が来ると天気予報で知ったある日、夫の元彼女の富士子が3人の友人を連れてやってきたのだ。

この近くの温泉に来たと言い、途中で車のチェーンが切れてしまったというのだ。

そこから温泉まで行くのは、既に無理な状態だったため、4人を登美子の家に泊まらせることとなる。

 

夫の毅は薬剤師で、実家に帰って来てからは週に3日だけ薬剤師として働いている。

フルタイムで働く必要がないほどの蓄えがあったのだ。

そして、登美子は毒薬の収集家であった。

 

富士子らが泊まった翌日の朝、毅がベッドの上で弓型に曲がった状態で心臓が止まっていた。

ストリキニーネを飲んだときの症状だった。

そして、富士子のコレクションのストリキニーネが、致死量より少し少ない量が減っていて…。

感想

登美子は、台風を悪魔だと言って恐れていたので、実家が台風の来ない地域だという毅と結婚しました。

しかし、台風は来ないけれど、白い悪魔である吹雪の激しい地域でした。

登美子にとっては、誤算でした。

 

登美子は、この結婚に後悔してはいなかったのでしょうか。

そして、毅に対してある意味、嘘をつかれていたということにもなります。

登美子は、ちょっと懲らしめてやろうと思っていただけだといいますが、本当にそうだったのでしょうか。

 

登美子は、子供の頃から台風が嫌いで悪魔だと思っていたのです。

そして、登美子の嫁いだ先には、白い悪魔が待ち受けていたのです。

完璧な蒐集 篠田真由美

あらすじ

私は、叔父から受け継いだ骨董品の蒐集を前に、妻にその素晴らしさを聞かせながら、満足感でいっぱいだった。

蒐集品は完璧だった。

 

叔父に子供の頃から蒐集品についての魅惑的な話を聞かせてもらっていた私は、頻繁に叔父の家に通っていた。

しかし、高校、大学、社会人となるうちに疎遠になっていたのだが、叔父が60代になった頃、久しぶりに家に招かれた。

そこには、身長1メートルほどの美しいビスクドールが飾ってあり、ある骨董屋から手に入れたものだった。

その人形は、ブランヴィリエ侯爵夫人をかたどったものだという。

フランヴィリエ夫人は、有名な毒殺常習犯である。

 

そして、叔父は、身の回りの世話をしてくれていたある若く美しい女性と結婚して…。

感想

骨董品というのは、いろいろな言われがあり、扱いはとても難しいものです。

扱い方によっては、危険なものもあるのだということをこの作品を読んで知りました。

子供の頃から、「私」は叔父の家に通って、叔父の蒐集品について最も理解していた人物です。

そのため、叔父は、自身が亡くなったあとにその蒐集品を「私」に託したのだと思います。

おそらく、蒐集品を完璧なものとしてくれるのは「私」だけだからです。

 

結末は、とても怖いです。

しかし、自業自得でもあります。

三人の女の物語 光原百合

りんご

あらすじ

三人の女性の三つの物語。

初めの二つは、毒にまつわる有名なお姫様の物語で、それを別の視点から描いた作品となっている。

最後の一つは、ある人妻の物語。

感想

初めの二つの物語は、毒に関わるものではありますが、心温まる物語です。

特に、二つ目の物語は、「そうだったのか」と少しうれしくなります。

一番怖いのは、最後の人妻の物語です。

毒殺というのは、他の殺害方法より、ある意味独特の思い入れが伴うものなのかもしれません。

最後に

アミの会(仮)「毒殺協奏曲」の感想でした。

8作品とも、作家それぞれの個性が出ていて、とても読み応えがありました。

毒殺には、「ある美学のようなものがある」ことを感じさせられる短編集です。

おすすめの一冊です!