こんにちは。
はるき ゆかです。
一昨日、秋吉理香子著「暗黒女子」読み終わりました。
先日、映画も観たのですが、映画は小説より登場人物が一人少ないですが、その再現性は素晴らしいと思います。
映画より、小説はもっと「イヤミス」です!
Contents
「暗黒女子」 はじめに
あらすじ
名門女子高で、最も美しくカリスマ性のある女生徒・いつみが死んだ。一週間後に集められたのは、いつみと親しかったはずの文学サークルのメンバー。ところが、彼女たちによる事件の証言は、思いがけない方向へ__。果たしていつみの死の真相とは?全ての予想を裏切る黒い結末まで、一気読み必死の衝撃作!
[引用元]双葉文庫「暗黒女子」裏表紙より
第六十一回聖母女子高等学院文学サークルの定例会が、ある嵐の夜に行われた。
定例会は、闇鍋を行うことが慣例となっている。
サークル会員それぞれが食材を持ち寄り、暗闇の中で食べる闇鍋。
会長だった白石いつみ亡き後、会長に就任した澄川小百合が「鍋奉行」を勤めることになっている。
闇鍋と言っても、ただ鍋を食べるだけではなく、れっきとした文学サークルなので一人一編短編小説を書いてもってきて、順に朗読していく。
今回の短編小説のテーマはすずらんの花束を胸に亡くなった「いつみの死」。
開会のあいさつと閉会のあいさつは、会長の澄川小百合が取り仕切る。
登場人物
白石いつみ
前文学サークル会長。美しい容姿とカリスマ性。気さくな性格で全校生徒の憧れの的。文学に強い関心もあるが、将来は医師を目指している。本学院の経営者の娘。
二谷美礼
1年A組。朗読小説は「居場所」。新入生では一人だけ。家が貧しく、毎年新入生の中から一人だけ選ばれる特待生としてこの聖母女子高等学院に入学した。老人福祉施設でボランティアを行っている。
小南あかね
2年B組。朗読小説は「マカロナージュ」。高級老舗料亭「こみなみ」の娘。料理、特にお菓子作りが得意な美少女。
ディアナ・デチェヴァ
ブルガリアからの留学生。朗読小説は「春のバルカン」。白石いつみがブルガリアにホームステイしたときのガイドの妹。いつみの口利きで日本への留学が叶った。
古賀園子
3年B組。朗読小説は「ラミアーの宴」。いつみと同じく大学は医学部志望。理数系が得意なリケジョ。いつみの家にも出入りするほどいつみ一家とは親密。
高岡志夜
2年C組。朗読小説は「天空神の去勢」。中学生の時にライトノベル作家デビューを果たす。同世代の女子高生に共感を呼ぶ文体で人気のサークル唯一のプロ作家。
澄川小百合
会長。朗読小説は「死者の呟き」。白石いつみとは幼い頃からの幼馴染で、いつみが太陽なら、小百合は月だと言われているいつみの親友。
短編小説の朗読
闇鍋を食べながらの朗読会が始まります。
朗読小説「居場所」 二谷美礼
唯一の新入生の二谷美礼は、本来ならこの聖母女子高等学院に入学できる経済状態の家庭の女の子ではありません。
学院の中でも、いじめにあっているわけではありませんが、いつも居場所がないと感じていましたが、その居場所を作ってくれたのが、白石いつみでした。
美礼は、白石いつみを心から慕っていました。
校則で禁止されているアルバイトを、こっそりしていた美礼。
それを知ったいつみが、弟の家庭教師になってほしいと申し出てくれたのです。
学院の経営者の家族の家庭教師なら、校長も文句は言わないだろうとのいつみの配慮です。
それ以来、美礼は白石家に出入りするようになりました。
ある日、いつみの父といつみが言い争いをしているのを観てしまった美礼は、いつみからあることを告白されます。
古賀園子がいつみの父親を誘惑しているのだと。
そして、いつみが大切にしていたすずらんの模様のバレッタを友情のしるしにとプレゼントされました。
まるで、形見分けのように。
- 二谷美礼は、古賀園子のせいでいつみが自ら命を絶ったのだと考えています。
朗読小説「マカロナージュ」 小南あかね
あかねの父は昔気質の料理人で、母は和菓子屋の一人娘でした。
そのため、小さい頃からあかねは料理をすることが大好きでした。
しかし、高級料亭「こみなみ」を継ぐのは、長男である兄。
そのため、あかねは、洋食と洋菓子づくりに精を出し、洋食屋を出店することを父に許されました。
ある日、あかねは、文学サークルのキッチンが素晴らしいと噂を耳にします。
道具が揃っていて使いやすそうで、サークル会員たちがときどきスイーツを作って楽しんでいると聞いたのです。
そして、あかねが授業で書いた「斜陽」の読書感想文をいつみが褒めてくれ、文学サークルに誘ってくれたのです。
文学にそれほど興味のないあかねですが、キッチンのことは気になります。
実際に見たキッチンは想像以上で、あかねは感動します。
その日、サロンでいつみと話し込んでしまったあかねは、気づいたら10時を過ぎていました。
あかねは、いつみの運転手付きの車で家まで送ってもらっていると、もうすぐ料亭「こみなみ」につく頃、消防車のサイレンの音がしました。
料亭「こみなみ」が火事を起こし、炎に包まれていたのです。
父が長年築いてきた全てが燃えてしまったのです。
あかねの洋食屋出店の話は立ち消えになってしまいました。
あかねが料理を作れるのは、文学サークルのキッチンだけ。
せっせと会員たちのためにお菓子作りに励みました。
あかねがマカロンを作っていたときのこと。
いつみから、ある下級生に付きまとわれて困っているという話を聞きます。
「家庭教師」になって家に上がり込んできて、彼女が来ると家の物がなくなるというのです。
そんな話を、マカロン作りの中で一番重要な工程・マカロナージュ(不要な気泡を潰す作業)をしながら、聞いていたあかねは、いつみは案外、人間関係をうまく「マカロナージュ」出来る人なのかもしれないと感じます。
泥棒をする彼女に対しても、いつみは態度を変えることなく接していたからです。
そしてある放課後、いつみはどうしても盗まれると困る、お祖母様に特注で作ってもらった「すずらんのバレッタ」を盗まれてしまったと、あかねに告白します。
数日後、いつみはバレッタを返してもらう話し合いをすることになりました。
放課後のテラスで。
その日、いつみは亡くなりました。
テラスから花壇に落ちて。
- 小南あかねは、いつみをテラスから突き落としたのは二谷美礼だと思っています。
朗読小説「春のバルカン」 ディアナ・デチェヴァ
ディアナの出身地であるブルガリアのレバゴラド村には吸血鬼伝説があります。
この村では、吸血鬼は若い娘の格好をしていて、ラミアーと呼ばれています。
春には「ラミアーの宴」という祭りが行われます。若い娘が黒いドレスを着て血を吸う真似をするのです。
その中でも特に美しいラミアーがいました。
それがいつみでした。
ディアナには双子の姉・エマがいます。
エマは観光ガイドとして働き、家計を助けていました。
ディアナは足が不自由なので仕事が出来ません。
エマは、レバゴラド村に観光客をホームステイさせる企画を立て、それがとても好評で、特に日本人はマナーが良いため、ホームステイ先のブルガリアの人々にも人気がありました。
そして、ディアナの家に二週間、ホームステイに来たのがいつみでした。
いつみは、とても好奇心旺盛で、ホームステイを楽しんでいました。
引率の北條先生は研修などで忙しく、あまりいつみと行動を共にすることが出来ず、その二週間で、いつみとエマ・ディアナ姉妹ととても仲良くなりました。
二週間はあっという間に過ぎ、悲しむエマとディアナに「来年もブルガリアに来るから」と言い残し、ブルガリアを去ったいつみ。
ディアナは、いつみと来年楽しく話ができるように日本語を勉強していました。
そして、翌年、いつみはまたブルガリアにホームステイにやって来ました。
しかし、今回はもう一人、高岡志夜が一緒でした。
ディアナはがっかりしました。またいつみと二人で楽しい日々を過ごすことを夢見ていたからです。
エマは出来るだけ効率的にさまざまな観光地を巡ることが出来るようにコースを考え、いつみは去年と同様楽しそうに観光を楽しんでいましたが、志夜は不機嫌で退屈そうで、わがままでした。
ホームステイ先も、料理がまずいと言ってホテルに変えてもらったり。
ディアナは、高岡志夜にあまり良い感情を持っていません。
それでも、志夜はいつみとはいつも楽しそうにしていましたが、志夜の笑顔はどこか不自然で、ときにはいつみに意地悪なことをしたりするのをディアナは見ていました。
それは、志夜の小説「君影草」について、いつみが持論を展開し、厳しい批判をしていたからだと、ディアナは気づきました。
その後、志夜は体調を崩し、最終日のパーティにも出席しませんでした。
しかし、ディアナにはとてもうれしいことがあったのです。
いつみが、いつみにそっくりな人形をディアナにプレゼントしてくれたのです。
いつみたちが帰国して数日後、聖母女子学院からメールが届きました。
そこには、留学生として招待したいというものでした。
留学費用の全てを学院が負担してくれるとのことです。
しかし、一人だけの受け入れだったため、ディアナは不自由な足が心配でエマが日本に行くことになりました。
ところが、エマは観光ガイドをしているときに石階段から転落して大けがをしてしまったのです。
そして、エマの代わりにディアナが留学することになりました。
さらに、ディアナが学院の生徒によい刺激になると、翌年からまた一人レバゴラド村から留学生を受け入れてもらえるというのです。
ディアナは文学サークルに入ることになり、いつみが高岡志夜の「君影草」をブルガリア語に翻訳してはどうかと提案したのです。
いつみは「君影草」は全世界で読まれるべきだと思っているのです。
しかし、高岡志夜は、浮かない顔をして、翻訳には反対だと言うのです。
それは、原作への冒涜だと。
そして、学院の行事である「イースター&ペンテコステ祭」の日。
イースターバニーの着ぐるみの生徒といつみが言い争いをしているのを聞いたディアナ。
さらにそのイースターバニーは、いつみの首を絞めていたのです。
「絶対に許さないんだから。あなたなんて殺してやる」と言いながら。
イースターバニーの着ぐるみの生徒は、手袋を外しており、爪をパステルグリーンに塗っていたのをディアナは覚えていました。
「何かの間違いだから、気にしないで」とディアナに言ういつみでしたが、ディアナは犯人を突き止めたいと思っていました。
お祭りの後、文学サークルに行くと、高岡志夜が売上金を数えていました。
その爪はパステルグリーンに塗られていたのです。
その数週間後、いつみが亡くなってしまいます。
- ディアナ・デチェヴァはいつみを殺したのは高岡志夜だと思っています。
朗読小説「ラミアーの宴」 古賀園子
古賀園子と白石いつみは、同級生で共に一流医大を目指しています。
古賀園子の父も医師で、園子は父のような医師になりたいと思っています。
文学には正直、あまり関心がないのですが、白石いつみに誘われるまま入会しました。
理論的な園子は、読書も5W1H(WHO・WHEN・WHERE・WHAT・WHY・HOW)を使って読み解いています。
今年、園子は、イースター祭の実行委員会を務めました。
それは、学院の経営者である白石氏(いつみの父)への恩返しの気持ちからでした。
園子は医師志望であるため、病院も経営している白石氏に実際に解剖しているところを見学させてもらったことがあるからでした。
この解剖見学によって、園子は人間には魂など宿っていないことを確信します。
だからこそ、医師になったときには、患者の心に寄り添う医師になりたいと気持ちを新たにすることが出来たのです。
ある日、白石氏のPCのパソコンの調子が悪くなり、PCに詳しい園子は修理が入る前にデータを保存したことがありました。
それ以来、園子は、白石氏のPCを触らせてもらえることになったのです。
イースター祭でうさぎのぬいぐるみを着て、踊るのはどうだろう?という白石氏の意見に、的確に対処する園子。
白石氏は、そのお礼にと園子にゲランの香水「ミュゲ」の限定品をプレゼントしてくれたのでした。
このところ、白石いつみの調子が悪そうです。
いつみは、このところ体がだるく重いと言うのです。
留学生のディアナがローズオイルでいつみにマッサージをしているのを見ながら、園子はあることを考えていました。
ディアナは、学院の新聖堂に飾られている女性の姿をした悪魔の下僕にそっくりだったのです。
園子は理系女子で、非科学的なことは信じませんが、ディアナの育った村の「ラミアーの宴」の写真を見て、肌が粟立ちました。
そして、ディアナはいつも白い包みを持っていました。
その包みには、いつみにそっくりな人形が入っていました。
ある日、朝早く学校に行った園子は、怖ろしいものを見てしまいます。
ディアナが、その人形の胸にナイフを突き立てていたのです。
実は、いつみが、来年からディアナのレバゴラド村からの留学生を招待するのを、今回限りで中止することを校長に提案したのです。
もっと他の日本で知られていない国から留学生を迎えれば、様々な文化が学べるという理由から。
おそらくブルガリアからの留学生は今回が最後となるでしょう。
ディアナにとって、この学院への留学はとてもメリットの大きいものでした。
レバゴラド村から日本への留学が継続的に行われれば、姉のエマにはボーナスが支払われ、ガイドとして長期契約が約束されているのです。
もし、それがなくなると、ディアナ家族にとっては死活問題なのです。
その頃、いつみには様々な体の異変が起こっていました。
爪や髪が伸びるのが異常に早く、聖書の朗読を嫌がり、学院にある呪われた噂のある大鏡の前から忽然と消えてしまったり…。
それから数週間後、いつみは亡くなってしまいます。
- 古賀園子はディアナ・デチェヴァがいつみを呪い殺したと思っています。
朗読小説「天空神の去勢」 高岡志夜
高岡志夜が作家デビューしたのは中学三年生のとき。
映画化のオファーや外国語の翻訳出版もすべて断っています。
志夜は、「君影草」の文体が「イマドキの日本の女子高生の話し言葉」であることなどを考えても日本でこそ読まれるべきだと思っているのです。
高岡志夜は、文学賞を受賞してからあっという間に顔が売れてしまい、学院でも大騒ぎ。
そして、白石いつみから文学サークルに誘われたのです。
サークルの素敵なサロンで執筆活動の許可をもらったり、おいしいお茶とお菓子。
いつみは、まるで芸術パトロンのようでした。
そして、志夜は、いつみと一緒にブルガリアにホームステイに行くことになります。
志夜は憧れのいつみと一緒で、楽しいホームステイを過ごしました。
ホームステイ中、一日だけエマとディアナの都合が悪く、いつみと二人で湖にピクニックに行った日のこと。
二人とも、水着を持っていなかったので、裸になって湖に入りました。
いつみの裸体は、ヴィーナスのように美しかったのを志夜は思い出します。
このピクニックのあと、志夜は引率の北條先生と一緒に美術館に行く予定でしたが、面倒になって一人で写真を撮りに街のあちこちを一人で歩きます。
帰国子女の志夜は、こういうことも平気で出来てしまうのでした。
イースター祭の日。
イースターバニーの役をすることになった志夜は、ちょっと休憩したくなって、いつみに頭の着ぐるみを取ってもらおうとしてうまくいかず、きゃあきゃあ言いながら「もう、先輩許さないんだから!」と騒いでいたと言います。
志夜は、自分といつみは、姉妹のような関係だったと言います。
文学サークルがイースター祭に出したお菓子は、毎年人気ですが、今年も大盛況でした。
そのお菓子を中心になって作ったのが小南あかね。
あかねの手首には、すずらんの模様のようなアザがあるのを初めて知った志夜。
そんなあかねについて、アザ以外にも志夜は気になることがあるのです。
文学サークルは、ある意味、いつみのためのものなので、いつみは自分が卒業したら閉鎖して、孤児院に寄付したいと言い出したのです。
あかねは、キッチンが取り上げられてしまうと思い、取り乱していました。
それからです。
お茶会のあと、いつみの体調が悪くなりだしたのは。
さらに、今まではみんなで取り分けるタイプのお菓子が多かったのに、最近はプリンやマカロンなど、一人ずつ食べるお菓子が増えているような気がする…。
そして、いつみのお菓子にだけちょっとした目印がついています。
また、志夜は、新入生の二谷美礼がいつみに分けてもらったマドレーヌを食べた日、家で吐いてしまったと言っていたことを思い出します。
そして、いつみが亡くなった今、文学サークルのサロンとキッチンは、料亭「こみなみ」が買い取ることが決まりました。
そこで、あかねの念願の洋食店を開くことになったのです。
いつみが亡くなってからも、あかねは生き生きとしながらお菓子作りをしています。
そんな姿を見て、志夜は、複雑な気持ちになっています。
- 高岡志夜はキッチンのために小南あかねがいつみをテラスから突き落としたと思っています。
それぞれの小説の齟齬
以上が、文学サークルの会員たちの短編小説の内容です。
それぞれが、ちょっとした証拠や犯人の動機を見つけ、小説を書いています。
しかし、人によって、同じ出来事でも理解が違っています。
そのため、それぞれが、別の人間を犯人だと考えているようです。
嘘をついているのは、一体誰なのでしょうか。
いつみの死の真相
会員たちのあとに、現会長である澄川小百合が短編小説を朗読します。
それは、澄川小百合が書いたものではなく、白石いつみが書いたものです。
その小説が、闇鍋定例会の本日、澄川小百合のもとに届いたのです。
そこには、白石いつみの死の真相が書かれています。
ぜひ、いつみの死の真相を知るために、本書を読んでみてください。
思ってもいない死の真相に、驚かれると思います。
最後に
秋吉理香子著「暗黒女子」の感想でした。
いつみの死の真相は、おそらくミステリーファンでも推理できないほど驚愕するものです。
そして、最後の澄川小百合の「閉会のあいさつ」は、肌が粟立つのを禁じ得ません。
ぜひ、おすすめの一冊です!
以下の記事で、映画の感想を書いています。
よろしければ、併せてご覧になってください。
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